ロンドン留学の日々

イギリス・ロンドンの生活、文化、基礎知識を綴ります。留学・ワーキングホリデー・移住。

推薦状を依頼する

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日本では進学の際、希望する教育機関(大学入試センターまたは希望する進学先)による学力検査の結果の他に、在籍校からの調査書(内申書)が、その学生の適性を判断する主な資料となるでしょう。ですがその内容は、生徒に知らされることはありません。成績は目にすることがあるかもしれませんが、自分の態度や意欲が教師にどのように評価されているかを知ることはできません。

イギリスで大学進学を希望する場合、その過程で学習することにどれだけ意義を見出しているか、自分がいかにその資格に適しているかを、志願理由書に綴ってアピールする必要があります(志願理由書についてはこちら)。そして自らを正しく評価するために、客観的な第三者からの意見を認識することは、不可欠だといえるのではないでしょうか。

進学時に限らず、就職活動やその他社会的な自己証明が必要な場合にも、本人をよく知る第三者からの推薦状が欠かせないのがイギリスです。時には家を借りる際にも、以前の大家からの手紙を求められることもあります(家賃の支払いに滞りはなかったか、部屋を良い状態に保った理想的な借り手だったかなどについて)。多くの場合は担当教師、アルバイト先や仕事の上司などに依頼すると、ためらうことなくさらりと一筆書いてくれるはずです。(親や親戚、友人、恋人などは避けましょう)

そういった手紙はリファレンス・レター(reference letter)またはレコメンデーション・レター(recommendation letter)などと呼ばれます。それを必要な機関に提出するのはあなたなので、書き上がると推薦者は手紙をあなたの元に送り返してくれます。自分について書かれた手紙を、少々照れながらも読み放題です。間違えてあなたのことを個人的に恨む人に依頼してしまわない限り、大抵は自分では気づいてもいなかった長所を備えた立派な人物として表してくれていることでしょう。

さらには「こんな感じでどうかしら」と確認されたり、こういう道に進むための手紙ですので、もう少しこの活動について触れてくださいなどというリクエストを受けてくれる場合もあるでしょう。こうしてできあがった推薦状は、あなたの未来の恩師や上司に、あなたという人物の素晴らしさを証明してくれるのです。

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日本に、個人的な推薦状を提出する習慣がないのは少し不利に感じるかもしれません。ですが、あなたのイギリス留学を認めてくれたり後押ししてくれる人がいるならば、推薦状を手に入れたも同然です。何故なら、例えその人が勝手がわからなくても、あなたが必要な事項を用意して、このように書いてくださいとガイドすればいいのです。

もしも正式な手紙のフォーマットがわからないと言われれば、サンプルを用意しても良いかもしれません。もちろん内容は英語である必要がありますが、日本語で書いてもらった後で英語に訳し、それを確認してもらったうえでサインをお願いするという方法もあります。

推薦状に特に決まったフォーマットはなく、通常は依頼された推薦人ができるだけ信憑性のあるものを作り上げる努力をしてくれます。ですがあなたの推薦者が参照できるテンプレートが必要であれば、インターネットで様々な例を見つけることができますのでいくつか見て研究してみてください。

そして推薦者の名前や所属、住所、また推薦状を宛てる人の住所、日付などを書くフォーマルな英文書のルールは従ってもらうと良いでしょう。宛名がわからない場合はTo whom it may concern(ご担当者様)、締めの文句(Yours sincerelyなど)、最後に記名と手書きのサインさえ忘れなければそれなりに見えるというものです。中身はもちろんですが、見栄えもやはり大事です。

さて肝心な内容です。例として、筆者が大学の卒業時に担当教授に書いてもらった推薦文を見てみましょう。

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本文一行目から「○○校の講師として△△(筆者)を見てきましたが、集中力があり、勤勉で時間を厳守し、責任感が強く魅力的な人物だと感じていました」

と、執筆者の素性(役職)と生徒との関係、生徒の授業態度と人柄を一気に述べてスタートダッシュを見せています。続いて、課題の提出や授業への出席を欠かさなかったことや、授業への貢献度など詳細を説明することで、先に述べた「良い生徒像」に信憑性を加えます。そして卒業時の成績、こなした課題の評価や論文執筆の腕前など、学力にも触れてだいたい5文で一段落です。

筆者の場合は特に提出先は決まっていなかったので、まとめとしての将来への期待を「どのような職でも、またさらなる教育の道に進むとしても、必ずや成功させるでしょう」と振り幅広く書いてくれました。あなたが大学受験用に提出するならば「この生徒ほど、御校の課程を修了し、世界に役立てることができるであろう人物は思いつきません」ぐらいの情熱的な後押しをもらうとより良いかもしれません。

世界の役には立たずとも、希望大学名とできればコース名に触れて、推薦者自体があなたの希望を理解した上で将来の期待を寄せている、ということを示してもらうのがよいでしょう。

最後に「必要であればいつでもご連絡ください」と締めてあります。これで、推薦者が手紙の内容に責任を持っていることがわかります。

サインは日本の押印のように重要ではありますが、推薦人が日本語での署名を突き通す人であれば、敢えてこの英文書のためにアルファベットで書いてもらわなくても大丈夫です。

また、例えば住所の代わりにメールアドレスしか書いてくれなかったとか、日付を北米式に月・日・年で書いてあるといった場合、特にわざわざ訂正依頼をする必要もないでしょう。何故なら「こうするべき」という正解はないからです。

筆者のこの推薦状を書いてくれた教授はおそらく60代の大御所で、連絡先に郵便が届く住所を書いてくれましたが、他にお願いした少し若い世代の教授の中には、電話番号やメールアドレスを加えてくれた人もいました。

推薦状に正解はありませんが、大切なのはあなたがそのコースに相応しい人物であることを証明してもらうことです。もしかすると推薦状の依頼は、あなたの理解者に、留学への熱意を理解してもらうことから始まるのかもしれません。