ロンドン留学の日々

イギリス・ロンドンの生活、文化、基礎知識を綴ります。留学・ワーキングホリデー・移住。

道に迷った時に覚えておきたいこと

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SIMロックのかかっていないGPS機能搭載のスマートフォンを日本から持ってきてすぐ使うことができるようになった現在、知らない国に降り立って街で道に迷うことは少なくなったのではないでしょうか。

さらに、もし海外ローミングをできない状態で上陸したとしても、ロンドンでは街中の至る所に現在地、最寄りの駅、大きめの通りの名前などが書いてある少々大味の地図がありますので、だいたいの方角を掴むことができるでしょう。(ですが、必要な時に限って見当たらないものです。)むしろ、観光客の広げるガイドブックの地図と袖が触れる確率のほうが高いかもしれません。そして外国からの観光客同士の場合、共通語もないということだってあるでしょう。

知らない人に「あなたの持っているその地図を見せてください」などとお願いするシチュエーションは想像しにくいものですが・・・

空港や、様々な交通機関のハブとなっている電車の駅(PaddingtonやVictoriaなど)には、無料のロンドン観光案内図が置いてあったりします。ホテルに泊まっていればレセプション(フロント/受付)でも手に入るかもしれませんので、GPSなどに頼るものかと意気込んで街に飛び出したものの途中で不安になった時には、ちょっとの寄り道で安心を手に入れることができるでしょう。

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さて、最新または古代から伝わるテクノロジー(印刷技術は七世紀末には生まれていたそうです)を使わずに、道に迷った己を救い出す伝統的な方法は「人に尋ねる」ことではないでしょうか。勿体ぶってここまでたどり着きましたが、語学の壁を乗り越えようとせっかく海を渡って来たのですから、できるだけ言葉でコミュニケーションを取っていきたいものです。

筆者は知り合いの日本人に「道を聞くには犬を連れている人を選ぶ」という技を教わりました。道を聞いても分からない観光客が、常に地図を広げていたりスーツケースを転がしているとは限らないからです。特に街中では、犬の散歩をする人はだいたい地元の人でしょう。その知り合いがある日、犬を連れたとても背の高い人に道を尋ね、丁寧に教えてくれたお礼に顔を見上げたところ、目の前にいたのは俳優のオーランド・ブルーム(Orlando Bloom)だった、と聞きました。話しかけたのなら人の目を見て聞きましょう。

道を尋ねる際、少なくともお願いごとをするのですから丁寧に「エクスキューズミー」と言って注目を集めるのがいいでしょう。慣れてくると”Hi, sorry,”などと始めることもできますが「ハイ、ソーリー」のあとスラスラと言葉が続かなければ、不自然な間と気まずい雰囲気が生まれ、焦ってしまうかもしれません。

ですから堂々と、あなたの発音で話しかけましょう。発音は、あなたの英語力を表すバロメーターでもありますので、あまりに流暢な発音で話しかけてしまうと、容赦なく早口で道案内をされてしまうかもしれないからです。

また無闇に「英語っぽさ」を意識して発音してしまうと、日本で習ったアメリカのアクセントに偏ってしまうという可能性もあります。どちらが正しく、どちらが間違っているというわけではありませんし、アメリカ人の話す英語がイギリスで通じないということもないのですが、どちらかと言えばカタカナ発音に似ていることばを、無駄に巻き舌を駆使してはっきり聞こえなくしてしまうよりは、パキっとカタコトで言ってしまう方がコミュニケーションの近道になるのではないかと思うのです。

何故なら筆者は先日、初めて日本から父を迎え「(舌を)巻かなくては!とりあえず巻かなくては!」という父の口元の焦りを終始感じたからです。例えばイングランドでは「R」をそのまま放置します。

父がクールに「トゥギャザー(ルルル)」という横で「トゥギャザーでいいですよ」などと思って止まず、「ヘァッピィー」と繰り返す父が「ハッピー」と言ってくれていたなら何度も聞き返さずに済んだのに、「ハァット」を簡潔に「ホット」と言ってくれれば、すぐに窓を開けたのに、などと考えていました。

アメリカで「ウォーター」と言っても通じなかった、「ぅわーらぁ」と言わなくてはいけない、といった話をよく耳にしますが、あなたが選んだイギリスでは「ウォーター」は「ウォーター」と呼ばれています。「ア」を「エァ」、「オ」を「ァ」などとドラマチックに飾らなくて大丈夫です。「これは日本語発音だろう」と思う発音で、だいたい何とかなるものです。

日本語にはない発音を、カタカナの枠におさめて表記するのには無理がありますが、イギリスで使う英語、発音についてはできる形で徐々に紹介していきましょう。

とりあえず「英語っぽい発音」という概念を忘れて、あなたらしい発音を堂々と。サンキューとプリーズを忘れずに。それだけであなたは、道を切り開くスキルをひとつ、手にしたことになります。