ロンドン留学の日々

イギリス・ロンドンの生活、文化、基礎知識を綴ります。留学・ワーキングホリデー・移住。

ロンドンの年末年始事情

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イギリスは、クリスマスと年末年始の過ごし方が日本とちょうど逆であるとよく言われます。クリスマスは早々にカードを書き上げ当日は家族と過ごし、年末年始は友人たちとどんちゃん騒ぎ、という筋書きなので、クリスマスに一緒に過ごす恋人がいない人が日本では寂しい思いをする(と思われている)ように、イギリスの若者が大晦日の予定もなく家で過ごしていると、友だちがいないのではないかと親に心配されてしまうという具合です。

筆者は一度ロンドンの親しい友人と共に、クリスマス休暇を日本で過ごしたことがありますが、筆者の実家に泊まっていたのにクリスマスにみんなでディナーを食べないこと、大晦日にパーティをして酔っ払う予定がないことについて、そのイギリス人の家族に慰められたものです。何度「日本は家族でお正月を祝う」と伝えても「クリスマス・ディナーはどんな料理を作るの?」「大晦日はどこに出かけるの?」と聞かれ続けました。筆者の実家は元旦早くに初詣に行くので、大晦日はおちおち飲んだくれていられないのよ、という説明も、特に有効ではなかったようです。

というわけで、社会的にはクリスマスの数日前から徐々にホリデーに突入し、その後早くて年明け2日目から仕事、という人もいるようです。昔と違って年末のホリデー・シーズンも意地でも開店を続けるお店も増えてきましたので(意地かどうかはわかりませんが)、クリスマスも正月も関係なく働く、という人もいるかもしれません。

またクリスマス翌日26日はボクシング・デーと呼ばれる休日です。郵便屋さんやお金持ちの使用人など当日は仕えなければならない主人がいる身分低めの人たちがクリスマス・ボックスを開ける日であるとか、商人たちが一年の商売の労いに箱入りの金銭やギフトを受け取る日であるなど、名前の由来には諸説あるようですが、現代のイギリスでは冬のセールの初日です。

言ってみれば、シーズン終わりのセール、シーズン半ばのセール、サイバー・マンデー、ブラック・フライデーなど、一年を通して何かとセールを催す現代社会ですが、ボクシング・デーも同じく、先週買わなくて良かった、を味わう絶好の日(のうちの一日)であると言えます。

特にクリスマスは誰もが無理してギフトを買い込む時期ですので、それを過ぎた翌日の「売り払い感」と言ったらないでしょう。また、誰かからの頂きものが大変お安い値札を付けられて山積みされているのを見つけることもあるかもしれません。ですがその誰かがあなたのためにそれを購入した日にはそれなりのお値段で売られていたはずなので、見なかったことにして安売りの山を通り過ぎましょう。

ちょっと時代遅れの赤と緑のセーターやトナカイ柄の靴下といった「惜しい」「残念な」贈り物ではなく、自分が本当に欲しいものを手に入れたボクシング・デー(から始まるセール)を過ぎれば、クリスマス前に会うことができなかった友人と食事会をしたり、ちょっと遠くの親戚に会いに行ったりして一年を締める人が多いでしょう。その頃によく耳にする質問が、”What’s your plan for New Year’s?””What are you doing on New Year’s?”といったものですが、これはほぼ大晦日の予定を聞かれていると捉えて良いと思います。

New Year’sはNew Year’s Eveの省略であるようで、その質問のときは元旦の予定など聞いていないと思って差し支えないか、とイギリス人の友人に確かめたところ「新年の予定に触れる時ば”New Year’s Resolutions”(新年の抱負)を聞くかな」と言われました。

そうです。誰もあなたが元旦に何をするかなど興味がないのです。何故なら大晦日は酔っ払う為にあるので、その翌日でしかない元旦はむしろ「二日酔いで過ごす日」に決まっているのです。ですから新しい年を迎えて清々しい気持ちで過ごす正月の数日間の予定を発表したくても、聞かれるのは「新年の抱負」などというスケールの大きな話なのです。

ちなみにLinkfluenceは2016年、イギリスの統計でトップ3となった抱負を発表しています。結果は、1位:もっとエクササイズする 2位:健康的な食生活 3位:飲酒量を減らす だったそうですよ。

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さて、大晦日にはロンドンをあげて年越し花火のイベントが行われます。2016年度は10月の時点で既に観覧チケットは売り切れているようですが、写真のようにチケットエリア場外から、設置されたスクリーンと空を交互に眺めながら楽しむこともできます。

またInternational Business Timesは、チケットなしで遠くから花火を目にすることができるロンドン各所をリストアップしています。Tower Bridgeなどまさに街中の花火スポットだけでなく、Primrose HillやHamstead Heathなど、セントラルロンドンからそれ程離れていない丘の上、というエリアが挙がっているのが、大都市でありながら案外こじんまりとしているロンドンらしいと思いませんか。

大晦日は地下鉄も24時間走っていますが、特に花火のあと帰宅する人びとが押し寄せる街中の駅の混雑は、想像に難くないでしょう。また人混みを避けた方が良い時代であるかもしれませんので、寒い思いもせず、人の後頭部も邪魔にならずに高画質で花火を楽しむには、BBCの生中継を見るのが一番かもしれません。テレビがない人は、BBCのサイト(iPlayer)で見ることもできるようですので、ソファの上なりベッドの中なり、あなたのベストポジションを確保して一年の締めくくりを目撃してください。