ロンドン留学の日々

イギリス・ロンドンの生活、文化、基礎知識を綴ります。留学・ワーキングホリデー・移住。

ロンドンのクリスマス_2

1

数年前まで「クリスマスにはお店が閉まる、食糧を買いだめしておかないと…」などと心の準備をしていた気がするのですが、昨今のロンドンで過ごすクリスマスには、そのような焦りはなくなりました。

「焦り」というのは「牛乳が切れたらどうしよう」という類のものですが、クリスマスの時期に友人たちが揃いも揃って母国に帰国してしまった語学留学時代のこと、特に誰かのパーティに招かれる予定も、ひとりで祝う予定もなかった寂しい日本人、普通の食生活を保つのにスーパーマーケットなしでやっていけるかしらと不安になったものです。スーパーも薬局も年中無休の東京の賑やかな街からやって来たから、なのかもしれません。

運命の12月24日、通常より早めの閉店時間前を狙って、近所のスーパーに最後の牛乳ハンティングに出かけたのが午後4時。次に買い出しに来られるのが27日、ということは必要なのは4パイント(2リットルちょっと)の牛乳が一本…と計算してみて初めて、お店が閉まるのがたったの二日半だと気づきました。それでも、丸二日間何があっても牛乳を手に入れることができないという不安は、個人商店は既に閉まり車も人通りもほとんどなくなったクリスマスイブの寂しい風景に、さらにかき立てられたのかもしれません。

実際にひとりで過ごしてみると特に困ったことはなかった、というのが結論ですが、現在では少なくともロンドン東部では、ほとんどの大手スーパーはクリスマス当日でも開いているようです。筆者の家の近所の24時間営業のスーパーTescoは、クリスマスイブは夜10時に閉まりますが、当日は午前11時から午後5時までと、通常の日曜日の営業時間とほとんど変わりませんので、生き延びる自信に漲っています。(クリスチャン系のオーナーでない個人商店、例えばトルコ系の小売店などはクリスマスに関係なく営業していると思われます)

ここ最近は、筆者は友人の家族のクリスマスディナーに招かれることになっているので、ひとりで牛乳のストックを数えて過ごすことはなくなりましたが、スーパーマーケットの開店時間を気にしなくてよくなったからこそ、他の不便を考慮するのを忘れてしまう、ということがあります。

12月25日、ロンドンの公共交通機関は稼働しません。「じゃあ当日、お昼頃に到着します」などと約束してしまい、いつもなら電車に乗って30分くらいで着く道のりを、家族全員分のプレゼントを抱えて2時間かけて汗だくで歩くというハードなチョイスをしてしまったことがあります。

タクシーやミニキャブは、当日値上がりします(2016年は4ポンド、余分にチャージされると発表されています)。そしてきっと、そもそも稼働数がいつもより少ないうえに、皆なんとかして大切な人の元へたどり着こうとするので、通りで走っているタクシーを見つけることはもちろん、ミニキャブを希望の時間に予約することも難しいかもしれません。せめてもの救いは、道路ががらんとしているので、いつもよりのびのびと街を歩くことができる、ということでしょうか。

ロンドンのクリスマスの交通情報は、Transport For London(TFL)のFestival Travelというページで確認できます。クリスマス翌日のボクシング・デイも祝日にあたるので、クリスマスのデイトリップが思わぬ泊りがけミニ旅行にならないよう、気をつけてください。

11月にもなると、街は徐々にクリスマスを思わせる風景に変わります。テレビでもクリスマスプレゼントの購買促進コマーシャルが流れ、子供番組に子供が喜ぶおもちゃの宣伝を挟んでくるので「子供のクリスマスへの意識が高まってくる」と頭を抱える人もいます。

そして日本で12月なると年賀状を意識し始めるように、少し早めにクリスマスカードを書かなくてはなりません。12月初めころからぼつぼつ届き始め、クリスマスが終わるまで家中に届いたカードを飾るのです。

日本で年賀状を送らない、という人々がいるように、イギリスにもカードを送らない、特にめでたくない、という人もいるかもしれません。ですが、筆者の知る人の多くは、クリスマスに遠く離れた家族の元へ帰る予定や、たくさんの人からカードが届くことを楽しみにしているようで、クリスマスとは「プレゼントをもらった子供がはしゃぐ日」だけではないのだなということを思い出します。

2

届いて(受け取って)から、当日までクリスマスツリーの下で寝かせるクリスマスプレゼントの交換は、大人にも嬉しいものでしょう。返品のルールも厳しくなく、どうみても一度使ったものをレシートと一緒にお店に持っていっても、特に検閲もされず返金されるということがよくあるイギリスですが、ギフトとして購入すると、返品・交換用のレシートを与えられます。

それをプレゼントに忍ばせれば、商品の購入価格を知られることなく、気に入らなかった受取人がお店に持っていって自分の好みのものと交換できるというシステムです。そんなことなら最初からギフト券を渡せばいいのに、という話かもしれませんが、自分を思って時間を割いてプレゼントを選んでくれたという事実が嬉しいことでもあるでしょう。

そしてクリスマスが終わると「義理の娘から蛇の指輪をもらったんだけど、気持ち悪いから交換してこようと思うの。ちょっとキツくて入らなかったって言えばいいかしら。でも代わりに全然違うテイストのものを選んだら、あからさますぎるわよねえ」などと頭を悩ませるのです。

伝統的でありながら、なかなか効率の悪いクリスマス。楽しい一日(または数日間)となりますように。