暖をとる
ロンドンの冬は他のヨーロッパの国に比べて暖かいものですが、建物が古くて隙間風が入る、窓ガラスが薄い、などの理由で部屋の中が惨めな寒さになることも稀ではありません。
家を借りる際に南向きの部屋やダブルグレイジング(double glazing=二重窓)の家を選ぶだけでだいぶ違いますが、入居した家が寒かった場合はどうすれば良いのでしょう。
個人の家にエアコンがあることが少ないイギリスですが、多くの場合(ヨーロッパのほとんどの国で)セントラルヒーティングというシステムで家中の暖房が管理されています。
ボイラーからパイプを通して各部屋のラジエータ(radiator)に熱い湯が送られて部屋が温まるという仕組みで、パイプが通っている床の上はじんわり暖かくなります。
ですので、例えば廊下のラジエータをオフにしていても、床下にあるパイプのせいで部屋との温度差があまりない、という可能性もあります。最近のお洒落なフラットには同じくお湯が送られるパイプが敷き詰められた床暖房があるそうですが、だいたいラジエータとの付き合いだと思って間違いないでしょう。
安全性が高いうえにエアコンや電気ストーブと違って家中が温まること、それぞれのラジエータで温度を調節できることから、セントラルヒーティングがきちんと機能していれば、外にいるのが駅やバス停まで歩く時間だけ、となりがちなロンドンの冬はそれほど辛くはないのではないでしょうか。
全体の温度管理はボイラーで行い、各ラジエータについているツマミ(雪マーク=オフから1~5といった設定)でも調節ができます。よほど古くなければタイマーも付いているので、毎日起きる前や帰宅前の時間を設定して部屋をゆっくり温めておく、ということも可能です。
お湯を沸かすのはガスですので、ボイラーが壊れたらガス会社に連絡することになります。
ですがシャワーやキッチンのお湯は問題なく使えるのに、ラジエータが温まらないという場合は、中に空気が溜まってお湯が行き渡らない状態になっているのかもしれません。
DIYショップやツールショップで写真のような鍵(radiator key)を購入して、ラジエータの四角いネジを回して空気を抜きます。
シューシューと大きな音を立てて空気が抜け切るとそのうちお湯が吹き出して来ますので、開始する前にラジエータを切って冷たい状態にしておく、回してから鍵は挿したままにしておいて、水の音がしてきたらすぐさま閉じられるようにしておくと安心でしょう。
またお湯が噴き出した時に備えて、お湯の拡散防止用のタオルを添えておいてもいいかもしれません。
空気抜きはそう滅多に必要なものではないはずですが、大抵家のどこかにあるはずですので、自分で買う必要はないかもしれません。大家さんに聞いてみても良いでしょう。
むしろヒーターの不調の原因が違うところにあった場合などは修理してもらう必要があるので、まずは暖房が効かないと大家さんに訴えるのが賢明かもしれません。
残念ながら「古いから仕方がない」「修理するには一度退去して貰わなければならない」などと言われることもあるかもしれません。
窓やドアに隙間がある場合は、断熱シール(insulation)やドアの前に置くだけのクッション型の断熱材(総合的にDraught excluder、Draught stopperなどと呼ばれます)を購入して、せめて隙間を塞ぐことはできますが、冷気の侵入を防ぐ程度ではなく暖房が欲しい、という切実な状況の場合は、電気ヒーターやデロンギなどのオイルヒーターなどを個人的に部屋に導入する方法もあります。
ですが光熱費(bills)込みで家賃を払っている場合や、特にフラットシェアで他のテナントと光熱費を折半して実費で出し合っている場合は、大家やシェアメイトに相談するのがフェアでしょう。内緒のつもりでいても、部屋のドアから温かい空気が漏れて使用が見つかる可能性も大です。
イギリスにも湯たんぽは存在します。「湯たんぽ」に特に名前は与えられなかったようで、特にヒネリもなくそのままホットウォーターボトル(hot water bottle)と呼ばれていて、様々な柄のカバーも見つかります。また電気毛布(electric blanket)もありますが、どちらかというとマットレスの上に敷くタイプがポピュラーなようです。
掛けるタイプのものはheated throw、敷くものはheated mattress topper、under blanket、mattress coverなど色々な呼び名があります。
使い捨てカイロを日本から持ってくるという人も多いようですが、入国の際、ポケットに入っていた使用中のカイロが何だかを説明できずに別室へ連れて行かれた人の話を聞いたことがありますので、注意が必要かもしれません。
逆に全く問題がなかったという人もいます。イギリスにカイロのようなものが売っていないわけではないですし、特に持ち込み禁止物として挙がっているわけではないのですが、入国審査官が「正体不明の発熱物体を保持した危険人物」と判断すれば、それを覆す説得力のある説明をする以外にイギリス入国の可能性はありません。
飛行機への持ち込みは航空会社や空港によってルールが違うようですので、確認するに越したことはないでしょう。また日本から送ってもらう場合、荷物に入れて良い商品とそうでないものがあるようです。
郵便局のサイトで国際郵便として送っても良いカイロを製造している会社名をリストアップしていますので、こちらを参考にしてください。
温かい家が見つかるのが一番ですが、もし改善が必要または可能な状況であれば、適当な対策を見つけて長い冬を生き延びてください。