ロンドン留学の日々

イギリス・ロンドンの生活、文化、基礎知識を綴ります。留学・ワーキングホリデー・移住。

イギリスの動物事情

ロンドンの公園で走り回る犬を見ると、ペットとして飼われているというよりも、のびのびと生きているなと感じます。

街中や公園内の決まったエリアなど、リード(leadまたはleash=リーシュ)をつけなければならないところもありますが、柵にも囲まれていない広場を自由に走り回る犬は、この世に距離や速度の制限などというものがあるとは夢にも思っていないと思わせる躍動感を見せます。

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公園には至る所に犬の糞用のゴミ箱がありますが、西ロンドンのホランドパークで見つけた犬用トイレは、東京のワンルームアパートのユニットバスより大きいのではないでしょうか。

イギリスには、動物を保護する条例 Animal Welfare Act 2006があります。英国最初のペットに関する法律が制定されたのが1911年、それ以降の動物保護法や動物放棄に関わる条例などをまとめたものが、2006年に施行されました。

動物実験に関する厳しい条例もあり、それらが常に見直され、改訂版が発行されます。

イギリスでは、相応しい環境、餌を与えられるべきであること、怪我や病気、あらゆる痛みから守られるべき(闘犬、断尾も禁止)であることなど、動物がその動物らしく生きる権利が認められています。

また16歳以下の子供に動物を売ったり、賞品として与えることも許されません(スコットランドでは動物を賞品とすることも禁止されています)。

つまり飼い主となる者は、その動物の権利を守る責任と義務を全うできる必要があるのです。

そして、それらの義務を怠った場合、裁判所はその市民に対し、動物を飼ったり、預かったり、輸送したりすることを禁止することができます。

これはペットだけでなく、農場の動物にも当てはまります。

ロンドンの住宅街では、近くの森や公園から餌を求めてやってくるキツネやリスの姿を見ることがあります。

車通りのある道をはるばる越えて、特にキツネなどは夜中にゴミ箱を漁って散らかしたり糞を置いていくので困った問題でもありますが、ゴミの捨て方に気をつけるより他ありません。

住宅街では、枠を越えて居住地を拡大し続けている人間と野生動物のせめぎ合いとも言えますが、都会を離れれば、もしかしたら人と動物はもっと上手に共存しているのかもしれません。

怪我をした野生動物を見かけた場合には、RSPCAなど動物保護のチャリティ団体に連絡するとすぐ駆けつけて、保護してくれます。

また迷い犬や猫を見つけたら、多くのペットには飼い主の情報が入ったマイクロチップが装填されているので、近くの動物病院に連れて行けば飼い主と連絡を取ってくれます。

ですが噛まれたりして病気に感染する危険もあるので、首輪を付けている、トリミングしてあるなど明らかにペットと分かる場合でなければ、むやみに近づかずRSPCAなどに連絡するのが良いかもしれません。

また動物の虐待を目撃した場合も放っておかず警察に通報することが多いようです。

つまり、あなたの自宅で動物の悲壮な鳴き声が続けば、耳にした誰かに通報される可能性があり、もし虐待の形跡があると判断されれば、罰金を課されるだけでなくペットを飼育する権利を奪われるかもしれません。

特に留守中のトラブルを避けるためにも、ご近所とのコミュニケーションを取るに越したことはないと言えるのではないでしょうか。

動物を家の中に閉じ込めておくのは良くない、ということでしょうか。

一軒家の場合、玄関や勝手口に猫用の扉(cat flap=キャットフラップ)をつけることが多いようです。大抵の人がドアの部分だけ購入し、普通のドアに穴を開けて自分で装備してしまいます。

猫にマイクロチップがついていれば、情報を登録してその家の猫だけが出入りできるようになるのです。

また、例えばグリニッチ地区では犬の散歩時に人への安全の配慮でリード装着をルール付けるはもちろんですが、散歩は一度に4匹まで、というサインを見かけます。

人がコントロールできる頭数の範囲と同時に、犬が健全に運動できるリミットを考慮しているのではないかと感じます。

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さらにイギリス、EUにはペット(犬、猫、フェレット)のパスポートがあり、ワクチン接種やマイクロチップの装着など必要な条件をクリアしたペットとの国外旅行が可能です。

人間が分かる言葉を話さない動物の管理に人間界のルールを適用することを滑稽と思う人もいるでしょうが、もしかしたらこれは、ペットを飼う人間の責任感の向上と管理に功を奏しているのかもしれません。

イギリスではペットショップでの生体販売が禁止されているという話もありますが、そんなことはなく、単純にペットショップの数が少ないだけのようです。

展示販売するショップではなくブリーダーから買い取ることもできますが、犬や猫であれば、多くの場合知り合いから譲り受けたり保護施設から引き取ったりするのが、現代では一般的ではないでしょうか。

動物愛護とは、ただ可愛がるだけではなく、動物と共存する上での人間の責任を認識する精神のことでもあるでしょう。

単純に飼い主だけでなく、取り囲むコミュニティの認識も含まれているところが、イギリスに動物愛護精神が定着しているという印象の所以かもしれません。