ロンドン留学の日々

イギリス・ロンドンの生活、文化、基礎知識を綴ります。留学・ワーキングホリデー・移住

イギリスの迷信

  • 夜に爪を切ると親の死に目に会えない
  • 靴は午前中におろす、新しい靴を履いたまま玄関に降りてはいけない

 
など、子供の頃に親に言われたまま、何となく守っている習慣はないでしょうか。

上記は自分で管理する行動なので、ロンドンでの生活で改めて意識することはありませんでしたが、「夜に口笛を吹くと蛇が出る」という教えが頭の隅にあった筆者は、イギリス人の友人が口笛を吹くのを耳にする度に気になっていました。

迷信だからと思っていても、何となく「良くないこと」を目の当たりにしているようでもぞもぞした気持ちだったので、友人に言ってみると「ヘビが出ることに特に問題でも?」といった態度でした。

現実的な視点を持ったその友人は、イギリスに生息する毒蛇はアダー(Adder)のみで、特にアグレッシブでないうえに噛まれてもダルくなる程度だと教えてくれましたが、イギリスでは大人でもこちらが驚くほどヘビやクモを怖がる人がいるので、そういう人に言えば慌てて口笛を止めてくれるかもしれません。

よく考えてみれば筆者が育った東京でもヘビを見ることなど滅多になかったのですが、何となく気になる言い伝えや迷信というのは不思議なものです。

イギリスに伝わる迷信

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イギリスにもそのような言い伝えは数多くあります。

例えば有名なものでは、

  • 黒猫を見る
  • はしごの下を通る
  • 家の中で傘を広げる

といった行為は縁起が悪いとされています。

黒猫に関しては、魔女狩りの時代に「黒=不吉」と捉えられたという説から、逆に「黒猫が通り過ぎる=不幸が過ぎる」として幸運の象徴とされるという話もあります。全く逆の解釈に行き着いたというのは興味深いですが、これはあまりに極端な例で、ほとんど誰もが「迷信」と認識する類の話でしょう。

はしごの下の通過は、上から物が落ちてきたら危ないという最な理由もありますが、はしごが作り出す三角形が「神とキリストと精霊の三位一体を表すから」、またははしごは十字架からキリストを下ろす際に使われたから、など宗教的な由来を唱える人もいるようです。単に縁起が悪い、というだけでなく、何故か「その年は結婚できない」という説もあるようです。

イギリスの迷信はキリスト教の考えに基づいたものが多いようですが、現在のイギリスでは、公共の場所にはしごを立てかけたままにしてはいけないというルール(Health and Safety at Work=労働環境の衛生と安全に関する条例)がありますし、はしごを使う際には足元で支える人がいなくてはいけないので、自分の家でわざわざくぐり抜けるというアクションを起こさない限り、街中で知らずに人が使っているはしごの下を通っていた、などということは起こらないかと思います。

家の中で傘を広げる

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濡れた傘を家の中で広げて乾かすというのは、特に迷信深い人でなくても多くのイギリス人が何となく避ける行動ではないでしょうか。

先端が危ないと言えば縁起というよりただの教訓という響きですが、気にする人が多い割に、知り合いの中にもこれの由来を知っている人が見つかりません。イギリスと世界の迷信や言い伝えを集めたHarry Oliver著 ”Black Cats and April Fools”にも「違う環境で行う動作を別の場所に持ち込むことは望ましくないらしい」と書いてある程度で、それほど説得力のある理由が見当たりませんでした。

梅雨には雨が降り続き、そうでなくても湿気の多い日本から来た筆者は傘を乾かすことを重視するのですが、家の中で?という顔をされることもしばしばです。習慣を知っているので人の家では広げませんが、自分の家でやっていても来客の不安な表情を招くものです。

イギリスでは雨が過ぎれば空気はカラリと乾燥するので、傘を干すのを忘れても玄関に放っておくだけでいつのまにか乾いている、ということを学びましたが、何故だか分かってはいないけれど何となくやってはいけない気がする、というのは、日本人にとっての北枕や畳の縁を踏むことと同じなのかもしれません。

迷信?習慣?言い回し?

若者の中には、自分は迷信などに惑わされない、と豪語する人も多くいます。

そんな人に「イギリスの迷信を教えて」というと「クリスマスにヤドリギの下でキスをする(と結婚の約束になる)」「塩をこぼすと不運が起こる (何故か向かいに座っている人に)」といった例を挙げてくれますが、あくまで「科学的根拠はないし、昔の人が信じていたでっち上げ」という態度を貫きます。

その割に、誕生ケーキのロウソクを吹き消す時には「願いごとをして(内容は誰にも言ってはいけない)」と仕切ったり、希望的観測を話す時は”Touch wood.”と言って木を叩いたりします(hopefully=願わくば、という意味で。ちなみに周りに触れることができる木がない場合、代わりに自分の頭にタッチすることもあります)。

迷信の起源を把握して使ったり、教訓や生活の知恵、または英語としての言い回しとの違いを定めるのは難しいものですが、頭の中では疑問を持っていても、イギリスに生まれ育つことで染み込んだ考え・行動の習慣があるのだなと微笑ましく思うばかりです。

迷信=superstitionという言葉を使う時点で、特に尊重されることにはならないと思いますが、日本で伝わる迷信をいくつか知っておくと、良いコミュニケーションのネタになるかもしれません。

ちなみにアメリカ人は「touch wood」を「knock on the wood」と言うそうですよ。