ロンドン留学の日々

イギリス・ロンドンの生活、文化、基礎知識を綴ります。留学・ワーキングホリデー・移住。

ロンドンの地下鉄ストライキに備えて

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ロンドンで地下鉄(tube=チューブ)を利用する生活をしていると、よくストライキが決行されることに驚くかもしれません。

数カ月おきに起こるような気がしてきます。驚きの次は閉口することでしょう。チューブで移動できる場所にはバスが通っているので、いくつもバスを乗り継いで目的地に到着することはできます。

ですが、 ストライキのせいで誰もがバスを利用するので、バス停は大混雑です。

そんな日は臨時で増便するものですが、いつもより多いバスの他、普段は乗らない人が自転車を引っ張り出してきておぼつかないハンドルさばきでゆっくり走ったり、交通ルールを特に把握しないで街中のレンタルバイクで走り出す人々のせいで、道路はもれなく大渋滞です。

ストライキの理由

イギリスは、TFL(Transport for London=ロンドン交通局)に限らず、労働組合が力を持っています。

というよりも、従業員が職場に意見することができる健全な状態を保とうとしているようです。

ですから賃金形態への抗議、人員削減への抵抗など、局の方針に不満を抱く従業員、それも現場での稼働という重要な役割をこなすスタッフが、何百万人もの利用客を混乱させるだけでなく、経済への影響もあることを承知のうえでストライキをチラつかせます。

丸24時間、時には48時間の間、地下鉄を走らせることができないとなると大変に困るTFLは、組合との話し合いに応じるわけです。

実際にストライキが起こる回数を考えると、どうやらそういった交渉はなかなか組合の思うようにはいかないようではありますが。

ストライキに対する反応

TFL職員の年収はなかなかのもので、地下鉄の運転手で5万から6万ポンドだと言われています。

英テレグラフ紙によると、トレーニングを初めたばかりの新人運転手でさえ2万4千ポンドほどで、3~4ヶ月のトレーニングを終えた段階でもう4万9673ポンドに上がるそうです。

イギリス人労働者のサラリーの平均が2万6500ポンドだという話を考えると、いきなりの高待遇と言えるでしょう。

これは地下鉄運転手の場合ですが、TFLのスタッフで言えば駅の職員の平均年収も3万ポンドと、英国人の平均よりも高い設定です。

管理職なら4万ポンド、とはいっても管理職よりも運転手のほうが高収入のようですね。

さらに年間休日日数は看護師、教師など平均して30日弱のところ43日、そして平均稼働時間は週36時間…聞けば聞くほど羨ましい環境です。

こういった情報は公開されているので、こんなに高待遇なのに何が不満でストライキばかりしているのだと、利用客の怒りを買うのはもっともです。

ですが、ストライキを起こすのは運転手に限らず様々な役職のスタッフを含めた組合の決断ですし、雇用者削減に対する抗議や労働環境の改善の要求は労働者の権利であるので仕方がない、と多くの人が思っているように感じます。

怒り半分、諦め半分、どうかストの日をやり過ごせますように、という気持ちではないでしょうか。

ストライキに備えて

ストライキ情報は、数週間前に発表されます。オイスターカードをサイトで登録してある人は、TFLからのメールが届くはずです。

ですから可能であればあらかじめ予定の時間や日付をずらしておくなり、決行された場合に備えて目的地に辿り着くルートを探っておくなり、ある程度の対策を練ることができます。

ストライキ当日

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定期券(公共交通機関のページ参照)を持っている人は、いつもと違うルート/手段で目的地に辿り着いても過剰課金されることはありません。

バスを乗り継いだり、歩きに挑戦する人は、いつもより(場合によっては数時間)早めに出発する必要があるでしょう。

特に観光客の多い中心部を徒歩で行く場合は、ただでさえ途絶えないゆっくり歩きの人の波でイライラが募ることと思いますので、大通りを避けた裏道を進むほうがいいかもしれません。

また臨時のバスが多数運行されるはずですが、バス停がいつもと違う場所になったりするのでTFLのサイトでよく確認してください。

徒歩のススメ

ロンドンの特にゾーン1は、地下鉄の駅の間隔も近く、チューブマップで見るとかなりの距離も案外徒歩で行けるものです。

確かにストライキ中に経験すると焦りと混乱でマイナスなイメージになるかもしれませんが、歴史ある建物を見上げたり、その中にひっそり存在する緑の公園を見かけたり、移動手段としての徒歩はとても実りの多い時間になると思います。

バスや地下鉄を乗りこなす、自転車で風を切る、といった住人らしい体験とはまた別に、街並みをより深く知り楽しむことができるこの贅沢な時間の使い方は、ロンドンに暮らしているからこそ可能なのかもしれません。

度々襲ってくるストライキを、精神的なダメージをあまり受けずに乗り越える手段が見つかりますように。