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ロンドン留学の日々

イギリス・ロンドンの生活、文化、基礎知識を綴ります。留学・ワーキングホリデー・移住

イギリスの食事は本当にまずいの?

イギリスの食事は不味い、と言う人は、ここしばらくイギリスを訪れたことがない人なのでははいでしょうか。

確かに今ほど安心して知らない店に飛び込めない時代もありましたが、2000年辺りから食のクオリティが上がってきた、というのが、筆者の周囲のイギリス人及び外国人の意見です。

つまりそれ以前に日本から訪英して、以来20年近く一度もイギリスの地を踏んでいない人は、残念な食事をした思い出で終わっている可能性があると考えられます。

例えば1ポンド300円時代であったなら、現代なら700円前後の感覚である5ポンドの格安外食メニューに、1500円も払った記憶になるのです。5ポンドの食事に質を期待しないのならば、20ポンドくらい奮発してまあまあな一皿を食べようにも、日本円で考えると6000円。相当上品な体験を期待したところで、ありつけるのはまあまあな食事、という具合であったことでしょう。

インド人やイタリア人が営むレストランなら安心、という説もありましたが「イギリスに来たならピザ食べなきゃ!」「イギリスのストリートフード、カレー」などと謳うガイドブックがあったとも思えませんので、街中の観光客向けレストランや、髪の毛の絡まったやつれたお母さんが営む薄暗いパブに飛びこんで、頬を濡らしながら食べもの風の何かを喉に流し込んだのかもしれません。

90年台の終わりにシェフJamie Oliverが出現し、食の改革に取り組み始めたり、Gordon Ramseyなどがセレブレティ・シェフというキャラクター付けで脚光を浴びたことで、イギリス人の食への興味と、一般家庭での料理への情熱が高まってきたと言えるでしょう。

それから10年20年経て、今でこそ家でも外でも健康で美味しい食事を求める風潮が定着しましたが、変革の途中では、ホームステイやホームパーティに招かれた家で、くたくたに茹ですぎていない野菜やのびきっていないパスタを振る舞われる可能性は、それ程高くなかったと思われます。ですから「イギリスの食事は不味い」と断言する人には、残念な体験をしたその人の不運を考慮して、優しい気持ちで接してあげてください。

現在のイギリスでは、オーガニックレストランや、ガストロパブと言われる美味しい料理を出すことを売りにしたパブが至る所に開店し、庶民が近場で満足な食事をすることも難しくはありません。ですが、当時の日本人なら残念な体験として封印したかもしれない、けれども懐かしいような不思議な感情を掻き立てる味に触れることも、まだまだ可能です。

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例えばウナギパイやウナギのゼリー寄せ(jellied eel)。蒲焼の国からやってきた人には、半透明な塩味ゼリーに閉じ込められたウナギには悲しい水っぽさを感じるかもしれませんが、写真のイースト・ロンドンはLeytonstoneにあるEel & Pie Houseでは、特に外はサクサク中はふっくらでもないパイ(肉もあります)とマッシュポテトやマッシュされたグリンピースを3ポンド以下で食べられます。

その昔の庶民の味を想像するのにもってこいです。筆者はこれが大好きで、2016年11月にロンドンのパイ&マッシュのお店を特集したTimeOutに敬礼をしたいところです。

イギリスといえばフィッシュ&チップスもよく知られていますが、2009年にはリーズ大学の科学者がチップス(フライドポテト)のニオイの成分は「バタースコッチ、ココア、玉ねぎ、花、チーズ、アイロン台」であると分析、発表しています(yorkshire post)。今ドキの洒落た人の中にはフィッシュ&チップスを臭いという人もいるようですが、この使い道の見えない研究結果は、イギリス庶民の胃袋の理解に役立つでしょうか。

また筆者は、パイ皮の代わりにマッシュポテトでミンチ肉を覆ったシェパーズ・パイの付け合せに茹でたジャガイモ、茹で人参にマッシュキャロット、といった強引な一皿に出会ったこともあります。昨今流行りのおしゃれなレストランでは見られない、洗練されていない素朴な料理は、イギリスでの生活を愛しく思うのに欠かせないアイテムかもしれません。

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料理の美味しさは個人の観点でしかないので、一概に批評することはできません。安かろうが高かろうが、自分なりの「値段と釣り合う胃袋の満たされ方」を見つけることが重要ではないでしょうか。