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ロンドン留学の日々

イギリス・ロンドンの生活、文化、基礎知識を綴ります。留学・ワーキングホリデー・移住

英国各地の訛りを映画で学ぶ

スコットランドはエジンバラの若者にスポットを当てた映画「トレインスポッティング」の続編が、2017年4月に日本でも公開になります。初作が発表された20年前から何度も見直して、スコティッシュ・アクセントを聞き取れるようになった人もいるのではないでしょうか。

北アイルランド、ウェールズ、スコットランド、そしてイングランドでも地域によって全く違うそれぞれの英語のアクセントに誇りを持つ英国の人は、別の都市に引越しても、周りの人に合わせて訛りを変えたり隠したりはしません。

話し方はアイデンティティを表すひとつの手段だからです。そのような人たちが自分の地元を舞台にした映画を見れば、俳優の下手なアクセントには文句を言い、上手な人には「なかなか良い」と控えめな賞賛を送ります。

イギリスで暮らすようになれば、アメリカ人の話す英語に違和感を覚えるようになるかもしれません。また、自分の過ごした地域のアクセントには愛着が湧いてくるでしょう。

留学が決まったら、向かう先のアクセントに慣れておくと良いかもしれません。語学学校の先生はある程度スタンダードなアクセントで話してくれると思いますが、特に独特の訛りがあるエリアでは、スーパーマーケットやパブで地元の人との会話を楽しむには、やはりアクセントの習得がかなり役に立ちます。

留学前でも留学中でも、また日本に帰った後で現地の生活を懐かしむうえでも、住民の話し方や街の雰囲気を忠実に再現したイギリス映画が便利になりますので、各地の訛りが顕著な映画をいくつかご紹介します。

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スコットランド/エジンバラ

スコットランドの首都エジンバラが舞台の「トレインスポッティング」の主な出演者のうち、ジョニー・リー・ミラー以外は全員スコットランド人でしたが、アクセントの指導者を付けずに撮影に挑んだミラーを、全撮影終了後にロンドンのアクセントで話し出すまでスコットランド人だと思っていた共演者もいたそうです。

共演者に気付かれないというのはかなりの腕前だと思いますが、新作ではもっと上を目指してコーチの指導を受けたというミラーのスコットランド訛りは、現地に暮らさない外国人には完璧に聞こえることでしょう。

ボキャブラリーの違いはいちいち克服するしかありませんが、母音の強調や「シュ」に近い「S」、イングランドでは飛ばされる「R」の巻き舌気味発音(舌を上顎に触れる)など、ちょっとしたパターンの習得で、耳が慣れて理解力が上がるかもしれません。

スコットランド/グラスゴー

さて「トレインスポッティング」でいわゆる「スコティッシュ・アクセント」の聞き取りに自信が付いたところで、最大の都市グラスゴーのアクセント、グラズウィジァン(Glaswegian)に触れてみてはいかがでしょう。

筆者はスカーレット・ヨハンソン主演の「アンダー・ザ・スキン(Under The Skin)」、ケン・ローチ監督の「スウィート・シックスティーン(Sweet Sixteen)」といった映画を見ましたが、特に後者は一緒に見たイングランド人も、耳にしてから数秒後に意味がわかったり(単語が違うのではなく、発音が違うため気がつくのに時差があるようです)何度か再生を中断して聞き直さなければならなかったりと、なかなか苦戦していたようです。

ほとんど同じ緯度を西に向かっただけでエジンバラの「トレインスポッティング」がとてもわかり易く思えることから、スコットランドの訛りを「スコティッシュ・アクセント」とひとつにまとめることはできないのだなと感じます。

イングランド北部

ジョーディ(Geordie)と言われる北東部ニューカッスルのアクセントが聞けるのは「リトル・ダンサー(Billy Elliot)」。スコットランドに近いので、発音が割りと似ているようです。

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北西部、リバプールやマンチェスターのスカウス(scouse)系は、フットボール・マンUファンならチェック済みかもしれない「リトル・ストライカー(There’s Only One Jimmy Grimble)」の他、音楽系のドキュメンタリー映画が手に入りやすいでしょう。

リバプール出身のザ・ビートルズは、バンド時代初期は皆純粋なスカウス(北西部訛り)を話していましたし、2002年の「24 Hour Party People」、2007年の「Control」といったマンチェスター周辺の音楽シーンを追ったドキュメンタリーや伝記的作品は、文字に起こされたミュージシャンの口調では伝わらない、飾らない話し方を聞くことができます。

ヨークシャー~イングランド中部

ヨークシャー、イースト・ミッドランズのタイク(tyke)は、シェフィールドをベースにしたブラック・コメディ「フォー・ライオンズ(Four Lions)」の他、1997年の「フル・モンティ(The Full Monty)」で、生活保護受給のための行列など現地の人が「ああこれがヨークシャーだわ」と残念そうに納得するヨークシャーの空気感を体験できるでしょう。「ザ・ブラザーズ・グリムズビー(Grimsby)」はアメリカ人のサーシャ・バロン・コーエンが主演ですが、得意な訛りのスキルを披露しています。

また、イギリスの歴史を感じさせるビジュアルが好きだけれど「プライドと偏見(Pride & Prejudice)」のように、カチコチの容認発音=RP(こちらのページ参照)に溢れていないものを見たい人は、「嵐が丘(Withering Heights)」の2011年のリメイク版がお薦めです。

ロンドン

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イギリス南部は、北部よりもいわゆる「標準語」に近い形で聞こえるでしょう。

アメリカのドラマなどでイギリス人キャラクターが登場すると、だいたいBBC発音(BBCのブロードキャスターのアクセント)で「イギリス人ぽさ」を強調するようですが、BBCも現在では様々なアクセントのキャスターを採用しています。

映画界で特にポートレイトされるのは、ロンドン(特に東部)のアクセントでしょうか。

筆者はロンドンでしか暮らしたことがありませんが、ウェストロンドンからイーストに引越して最初は戸惑いました。

東ロンドンの有名なコックニーアクセントについて調べると、韻を踏んだ別の言葉を使う独特のボキャブラリーについての情報はよくあるものの、それをいくつか覚えたところで、実際には隠語のようなコックニーの言葉遣いをする人はほとんどいません。

その代わり、単純に発音が違うことに惑わされるのです。例えば家に来たプラマー(配管工)やお隣さんの挨拶(らしきもの)など、分かるはずのことが聞き取れない、といった具合です。

イーストロンドンの人と話すと、「T」を抜かしてスタッカートにする、単語の初まりの「H」を発音しない、「エイ」を期待するところが「アイ」に近くなる、「TH」を「F」または「V」と発音する、といった特長に気付くでしょう。例えば「water」が「ウォ・アー」に、「hungry」が「アングリー」に、「Spain」が「スパイン」に、「together」が「トゥギャヴァー」、「teeth」が「ティーフ」といった具合です。

そもそも同じ言葉で発音が違うだけのはずなのですが、ツイッターなどインターネットで人々が気軽に話し言葉でタイピングする時代になってからは、実際に「F」「V」で綴られているのをよく目にします。

またはニュースのヘッドラインなどで、イーストロンドン出身のセレブリティの発言を書き記した場合などにも、わざと発音された通りに表記することもあります。

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コックニーアクセントを聞くことができる映画と言えば、1968年の「オリバー!(Oliver!)」、1979年の「さらば青春の光(Quadrophenia)」などがよく知られていますが、特に「マイ・フェア・レディ(My Fair Lady)」では、ガサツなコックニーが上品なRP(容認発音)へと再構築されるストーリーですので、コックニーの特徴がかなり強調されています。

中でも「The rain in Spain stays mainly in the plain」を「ザ・ライン・イン・スパイン・スタイズ・マインリー・イン・ディ・プライン」と発音するシーンは、コックニー訛りを表す映画のセリフとして有名です。一緒に発音しながら違いを確かめることができるでしょう。

現代の作品にもイーストロンドンを見ることができる作品が数多くあります。

ガイ・リッチー監督の出世作となった1998年の「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ(Lock, Stock and Two Smoking Barrels)」は、イースト・ロンドンの人々の他、少々お上品で極悪になりきれないロンドナー、呑気なイギリス北部の人々なども描写されています。

また同監督の「スナッチ(Snatch)」は、ブラット・ピット演じるパイキー(アイルランドのジプシー)の強烈なアクセント、アメリカ人、ロシア人も登場します。様々なアクセントに慣れてきたら、話し方で人の雰囲気やキャラクターを掴めるようになるかもしれません。

ジュード・ロウの他、ジョニー・リー・ミラーを筆頭にアメリカ版シャーロック・ホームズ「エレメンタリー」の俳優が多く出演する「ロンドン・ドッグス(Love, Honor & Obey)」は、イーストロンドン出身ではない役者が本物のコックニーでないことがバレる瞬間が時々あるものの、サウス・イーストとノース・イースト(テムズ川を挟んだ北と南)の雰囲気や人々の適当さがよく表されています。

ウェールズ

ウェールズについて、筆者はまだ地域ごとのアクセントを追いきれていないのですが、ロンドン出身のヒュー・グラントがウェルシュに挑戦していなくて安心な「ウェールズの山(The Englishman Who Went Up a Hill But Came Down a Mountain)」や、南西部のスワンジーを舞台にした2010年の「サブマリン(Submarine)」で、独特のアクセントを聞くことができます。

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北アイルランド

総じてザ・トラブル(The Trouble)と呼ばれる北アイルランドの紛争を扱うもの以外では、2013年に始まった「The Fall」というTVシリーズが、北アイルランドのベルファストを舞台にしています。メインキャラクターはロンドンから送られた捜査官ですので、アクセントの聞き比べができるでしょう。

日本で字幕付きが手に入りやすい有名なものから、イギリスに来て英語で聞けるようになればこっちのもの、という難易度の高いものまでありますが、最初は字幕付きで、慣れてきたら耳を使うようにして、またイギリス人の友人ができたら映画を一緒に見て、わからないところを教えてもらうといいかもしれません。

アクセントだけでなく、話し方から伝わる人々のキャラクターの違いも楽しんでみてください。