ロンドン留学の日々

イギリス・ロンドンの生活、文化、基礎知識を綴ります。留学・ワーキングホリデー・移住。

音楽を楽しむ

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イギリスの音楽が好きで、留学を決めた人も多いかもしれません。リバプール出身のザ・ビートルズ、マンチェスターのザ・スミスにザ・ストーン・ローゼズ、オアシス、The 1975、スコットランドはグラスゴーのプライマル・スクリーム、エド・シーランやジョージ・エズラもイギリスが誇るミュージシャンですし、アデルや2016年に亡くなったジョージ・マイケルやデヴィッド・ボウイはロンドン出身です。

憧れのミュージシャンを排出した都市に暮らしてみれば、歌詞にあった風景を実際に目にしたり、地域の人のキャラクターと慣れ親しんで、歌の意味をより深く理解できるようにできるかもしれません。

首都ロンドンに留学すれば、ライブに足を運べる機会がより多く、新しい音楽との出会いや視野の広がりに繋がるかもしれません。また、一度有名になったミュージシャンは、地元でのライブ(ギグ=gigと呼ばれます)よりもロンドンでコンサートを見られる確率の方が高いとも言えるでしょう。

ではコンサートのチケットを探したり、手に入れるにはどうすれば良いのでしょう。

まずは、チケット販売サイトで公演を探す方法があります。大きな興行であればTicket MasterLive Nationといった大手のサイト、またWe Got TicketやTicketwebなど、比較的規模の小さいイベントを中心に扱うサイトもあります。

好きな会場(ヴェニュー=venue)があれば、オフィシャルサイトをチェックするのも良いでしょう。

O2 Academy系列、Apollo Hammersmith、Royal Albert Hall、KoKo、Electric Ballroom、Roundhouse、100 Clubなどロンドンには歴史ある、または有名なライブ会場が多くあります。

伝説のミュージシャンが過去に演奏した小さなステージを間近で体感できるのは、変わらぬ姿を残すことに長けたロンドンならではかもしれません。こちらには様々なヴェニューのリストがあります。

イーストロンドンのCafe Otoでは、イギリスに限らず日本を含む世界から様々なスタイルのミュージシャンが集まります。呼吸の音も聞こえるような小さな会場で、鳥肌モノのパフォーマンスが見られます。その名の通り昼間はカフェ営業をしていますし、日本酒も販売していますので、冒険したい気分のときには訪れてはいかがでしょう。

TimeOutやSongkickなど、イベントを紹介しているサイトで探すのも手です。音楽に限らず、思わず興味を惹かれるジャンルが見つかるかもしれません。TimeOutはジャンルごとにフィルターを掛けることが可能ですし、Songkickは好みのバンドなどを登録しておくと、コンサートが決まったらお知らせしてくれます。

またLondonNearsのリストは、会場のポストコードが分かるので、近所で何かイベントはないかと探しているときには便利です。大きな会場も小さめの会場のイベントもあり、スマートフォンでさらっと眺めて好きなアーティストの名前を見つけて、すっかり見逃していたイベントに出かける運びになることもあるでしょう。直接チケットを買うことはできませんが、イベントのページにリンクが貼ってあるので大抵の場合はそこから購入することができます。

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イギリスといえば音楽フェステバル、というイメージを持っている人もいるかもしれません。

5月にブライトンで行われるThe Great Escape、6月はDownload FestivalにGlastonbury Festival、7月はサフォーク州でLatitude Festival、8月のウェールズでのGreen Man FestivalにReading & Leeds Festivals、9月にはワイト島でのBestival(2017年は会場がドーセットに移動)とスコットランドでのT in the Parkなど、夏は一瞬も逃すまいと、イベントが企画されています。

夏とはいっても、イギリスの夏。悪天候でアクセスが確保されず、会場に辿り着けない人が続出したりイベント自体が中止になったりすることもあります。また何とか開催されても、泥にまみれて音楽どころではない状態に陥ることもしばしばで、どんなイベントも清潔感に溢れ統制の取れた日本のイベントと比べたら、ハードルの高いアクティビティになるかもしれません。ですが、楽しければいいじゃない、というイギリスのエンターテイメントを体験する良い機会となるでしょう。

またキャンプや自然と戯れることが苦手な人には、イーストロンドンのヴィクトリア・パークで開催されるLoveboxや、フィンズブリー・パークのWireless Festivalなど都市型フェス、エセックスのWe Are FSTVLや、サウスウェストロンドンのクラッパムコモンで行われるSouth West Fourなど、ロッククラブ型フェスもあります。フェスティバルを満喫して夜には自宅に戻れるというのも乙なものです。

問題は、チケットは前年または年の初め、まだヘッドライナーも決定していない時点で発売開始、夏のフェス気分が盛り上がってきた頃にはほとんどが売り切れているということでしょうか。入場料が高い上に、遠くでの開催の場合は旅費や滞在費もかかります。費用を少しでも浮かせるために一緒に参加する仲間を募ったり、出演者を見てから行くかどうかを決めたりと、頭を悩ませる駆け引きの多い夏になるかもしれません。ですが、その苦労に見合った体験になることでしょう。

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音楽の道を志してロンドンに渡る人もいると思います。クラシック音楽だけでなく、ポップミュージックのパフォーマンス、作詞作曲やサウンドエンジニアリングを学ぶコースなど、大学や専門学校で学べる分野も多彩ですし、ミュージシャン人口を考えるとセンスの合うアーティスト仲間に出会ったり良い楽器を手に入れられる確率も、ロンドンであれば高いかもしれません。

やはりイギリスにいるミュージシャンの質は高いと他のヨーロッパの国で活躍するとあるイギリス人アーティストから聞いたことがありますが、音楽家だけでなく、プロモーターやパブリッシャーなどとの良い出会いがあれば、活躍の道も広がるでしょう。

また日本とは違い、どんなにマイナーなバンドでもノルマ制のチケットを売り切れなければ出演料を求められるなどということはありません。もちろん出演料がでない時もあるでしょうが、演奏や著作に関して、基本的に音楽家の権利がしっかり守られていると思って良いでしょう。飛び込みでパフォーマンスできるオープンマイクもあちこちで開催されており、無名のアーティストをサポートする体制があるように見受けられます。

ですが収入を得る場合は、演奏して出演料を受け取ることができるビザがあること、またパフォーマンスしてはいけないエリアでないなど(バスキングと言われるストリート・パフォーマンスは、例えば地下鉄の駅などではライセンスが必要な場合がほとんどです)、ルールに気をつけましょう。

音楽の歴史と未来を感じられる、素晴らしいロンドン体験になりますように。

イギリスの動物事情

ロンドンの公園で走り回る犬を見ると、ペットとして飼われているというよりも、のびのびと生きているなと感じます。

街中や公園内の決まったエリアなど、リード(leadまたはleash=リーシュ)をつけなければならないところもありますが、柵にも囲まれていない広場を自由に走り回る犬は、この世に距離や速度の制限などというものがあるとは夢にも思っていないと思わせる躍動感を見せます。

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公園には至る所に犬の糞用のゴミ箱がありますが、西ロンドンのホランドパークで見つけた犬用トイレは、東京のワンルームアパートのユニットバスより大きいのではないでしょうか。

イギリスには、動物を保護する条例 Animal Welfare Act 2006があります。英国最初のペットに関する法律が制定されたのが1911年、それ以降の動物保護法や動物放棄に関わる条例などをまとめたものが、2006年に施行されました。

動物実験に関する厳しい条例もあり、それらが常に見直され、改訂版が発行されます。

イギリスでは、相応しい環境、餌を与えられるべきであること、怪我や病気、あらゆる痛みから守られるべき(闘犬、断尾も禁止)であることなど、動物がその動物らしく生きる権利が認められています。

また16歳以下の子供に動物を売ったり、賞品として与えることも許されません(スコットランドでは動物を賞品とすることも禁止されています)。

つまり飼い主となる者は、その動物の権利を守る責任と義務を全うできる必要があるのです。

そして、それらの義務を怠った場合、裁判所はその市民に対し、動物を飼ったり、預かったり、輸送したりすることを禁止することができます。

これはペットだけでなく、農場の動物にも当てはまります。

ロンドンの住宅街では、近くの森や公園から餌を求めてやってくるキツネやリスの姿を見ることがあります。

車通りのある道をはるばる越えて、特にキツネなどは夜中にゴミ箱を漁って散らかしたり糞を置いていくので困った問題でもありますが、ゴミの捨て方に気をつけるより他ありません。

住宅街では、枠を越えて居住地を拡大し続けている人間と野生動物のせめぎ合いとも言えますが、都会を離れれば、もしかしたら人と動物はもっと上手に共存しているのかもしれません。

怪我をした野生動物を見かけた場合には、RSPCAなど動物保護のチャリティ団体に連絡するとすぐ駆けつけて、保護してくれます。

また迷い犬や猫を見つけたら、多くのペットには飼い主の情報が入ったマイクロチップが装填されているので、近くの動物病院に連れて行けば飼い主と連絡を取ってくれます。

ですが噛まれたりして病気に感染する危険もあるので、首輪を付けている、トリミングしてあるなど明らかにペットと分かる場合でなければ、むやみに近づかずRSPCAなどに連絡するのが良いかもしれません。

また動物の虐待を目撃した場合も放っておかず警察に通報することが多いようです。

つまり、あなたの自宅で動物の悲壮な鳴き声が続けば、耳にした誰かに通報される可能性があり、もし虐待の形跡があると判断されれば、罰金を課されるだけでなくペットを飼育する権利を奪われるかもしれません。

特に留守中のトラブルを避けるためにも、ご近所とのコミュニケーションを取るに越したことはないと言えるのではないでしょうか。

動物を家の中に閉じ込めておくのは良くない、ということでしょうか。

一軒家の場合、玄関や勝手口に猫用の扉(cat flap=キャットフラップ)をつけることが多いようです。大抵の人がドアの部分だけ購入し、普通のドアに穴を開けて自分で装備してしまいます。

猫にマイクロチップがついていれば、情報を登録してその家の猫だけが出入りできるようになるのです。

また、例えばグリニッチ地区では犬の散歩時に人への安全の配慮でリード装着をルール付けるはもちろんですが、散歩は一度に4匹まで、というサインを見かけます。

人がコントロールできる頭数の範囲と同時に、犬が健全に運動できるリミットを考慮しているのではないかと感じます。

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さらにイギリス、EUにはペット(犬、猫、フェレット)のパスポートがあり、ワクチン接種やマイクロチップの装着など必要な条件をクリアしたペットとの国外旅行が可能です。

人間が分かる言葉を話さない動物の管理に人間界のルールを適用することを滑稽と思う人もいるでしょうが、もしかしたらこれは、ペットを飼う人間の責任感の向上と管理に功を奏しているのかもしれません。

イギリスではペットショップでの生体販売が禁止されているという話もありますが、そんなことはなく、単純にペットショップの数が少ないだけのようです。

展示販売するショップではなくブリーダーから買い取ることもできますが、犬や猫であれば、多くの場合知り合いから譲り受けたり保護施設から引き取ったりするのが、現代では一般的ではないでしょうか。

動物愛護とは、ただ可愛がるだけではなく、動物と共存する上での人間の責任を認識する精神のことでもあるでしょう。

単純に飼い主だけでなく、取り囲むコミュニティの認識も含まれているところが、イギリスに動物愛護精神が定着しているという印象の所以かもしれません。

ロンドンのDIY事情

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イギリスで家(または部屋)を借りると、原状回復を条件に手を加えてもいいよ、と言われることが多いようです。

壁に釘を打って棚を取り付けたり、借家の場合は壁にペンキを塗ったりすることも頻繁にあります。

またトイレの便座が壊れたので買い替えて自分で設置するなど、日本であれば「丸ごと交換になるのかな」などと考えてどこに連絡すれば良いのか迷いそうな状況でも、便座の部分だけ売っているのをよく見るので、自分で交換するという解決策が視野にあるように思えます。

つまり人々は自分で何かを修理したり家のデコレーションをすることに慣れており、その為の道具を手に入れることも簡単なのです。

もちろん、全て業者に頼んだり物件の持ち主と相談してハンディマンを派遣してもらうという人もいるでしょうが、DIYが「家具を作ったりする趣味」の枠を越えて生活の一部になっているイギリスの家庭には、ある程度立派な工具セットが常備されていることが多い気がします。

特にプラマー(plumber=配管工)やエレクトリシャン(electrician=電気技師)といったその道のプロでもないけれど、物置から電動ドリル(electric drill)やハンダゴテ(soldering iron)が出てきたり、家具を取り付けるのに水準器(spirit lebel)を使って真剣に角度を図ったり、といったことが珍しくないようです。

日本の賃貸住宅のルールに慣れていた筆者が、壁に額縁を掛けるのに壁に釘を打つことを躊躇していたら、そんなに気になるなら退去時にフィラー(filler=ペンキの前に塗布して塗装面を平滑にするペースト)を埋め込めば十分だよ、とアドバイスをもらったこともあります。

そしてそのフィラーも、ペンキを塗る人なら大抵持っていますし、お店のペンキコーナーで簡単に見つかります。

壁に穴を開けたくない人は、Blu Tackという粘着性のラバーで解決です。画鋲の代わりだけでなく、プラスチックや木にも使え、剥がした後が残りません。日本でも購入できるようですが、イギリスではあらゆるお店の文房具コーナーに必ずと言っていいほど置いてあります。

テレビのコマーシャルも頻繁に流れるので、生活に密着していることがわかるかもしれませんが、DIYの道具を扱うお店は数多くあります。

B&Q、Homebase、Wickesなどインテリアからガーデニング用品、バスルームやキッチンの素材や部品を幅広く扱うDIY専門のチェーン店は、プロフェッショナルなだけあってだいたい何でも揃う上に店員さんに相談もできるので、何かトラブルが起こったり必要なものが出てきたらとりあえず足を運んでみると良いでしょう。

また文房具や日用品、衛生用品も扱うWilkoやB&M、店頭(またはオンラインで予約)注文してその場で受け取るArgosでは、比較的安い値段でペンキ塗りツールや工具などベーシックなアイテムを抑えています。

大抵のお店はオンラインショップも運営していますが、DIYが盛んなだけあって、種類が豊富過ぎて望む色や素材に迷いすぎたり、何しろ古いものを頑張って使い続けるイギリスですので、現在はフラットに装備してあるものと同じ型番を扱っていないということがあったりと、ハードルが高いこともあるでしょう。

DIYをしてみようかなと思ったならば、いくつかお店を巡ってみて、気軽にアイテムが手に入る環境を楽しんでみると良いかもしれません。

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スパナー(spanner)やレンチ(wrench)など日本語の認識で通じるDIY用語もありますが、日本と違う、またはイギリス的な呼び名を持つ道具も多くあります。店頭で目指す商品にたどり着けるよう、いくつかご紹介します。

  • ペンキ=paint(ペンキを塗る行為も、動詞としてpaintが使われます)
  • ネジ=screw(ドライバーはscrew driverと言わないと伝わりません)
  • ペンチ=pliers(挟む部分が2つですので複数系です)
  • カッターナイフ=stanley knife(英スタンレー社に由来、カッターの愛称のようになっています)
  • 自転車などに使われる六角レンチ=allen key

さて賃貸フラットやシェアフラットの場合、何が借用社の権利で、どこまでが誰の責任なのでしょう。

もっとも、それぞれ大家(landlordまたはlandlady)との契約によって異なるので一概には言えませんが、一般的にトイレやシャワー、クッカー(調理台)など備え付けのものが壊れた場合は大家が修理、電球など消耗品の交換はテナント(居住者)の責任、と考えて良いでしょう。

大家にはテナントが安全な生活を送る環境を保証することが義務付けられているので、例えば暖房器具や水道管の修理は即時対応しなくてはなりません(とは言っても業者の対応が遅い危険もあるのがイギリス)。

またネズミやベッドバグ(南京虫)が出た場合には、専門の業者に駆除を依頼しなくてはいけませんので、大家に連絡をしましょう。

テナントが個人的に業者に何かを依頼したい場合は、大家に相談する必要があるでしょう。

大家が把握していない部外者の侵入が原因で万が一トラブルが起きたなら、テナントの安全は大家が保証できる範囲を越えています。

その場の行為に限らず、間取りを把握されて後に窃盗に入られる可能性などもないとは言えませんので、テナントにも、大家の物件に損害を与える行為を避ける責任があります。

最終的にやり取りする金額の大きさや物件の価値を考えると、大家とは良好な関係を保つに越したことはありません。

日本と比べると自由度は高い方だとは思いますが、分からないことがあれば豆に連絡を取って、心地よい家造りを楽しんでください。

イギリスの迷信

  • 夜に爪を切ると親の死に目に会えない
  • 靴は午前中におろす、新しい靴を履いたまま玄関に降りてはいけない

 
など、子供の頃に親に言われたまま、何となく守っている習慣はないでしょうか。

上記は自分で管理する行動なので、ロンドンでの生活で改めて意識することはありませんでしたが、「夜に口笛を吹くと蛇が出る」という教えが頭の隅にあった筆者は、イギリス人の友人が口笛を吹くのを耳にする度に気になっていました。

迷信だからと思っていても、何となく「良くないこと」を目の当たりにしているようでもぞもぞした気持ちだったので、友人に言ってみると「ヘビが出ることに特に問題でも?」といった態度でした。

現実的な視点を持ったその友人は、イギリスに生息する毒蛇はアダー(Adder)のみで、特にアグレッシブでないうえに噛まれてもダルくなる程度だと教えてくれましたが、イギリスでは大人でもこちらが驚くほどヘビやクモを怖がる人がいるので、そういう人に言えば慌てて口笛を止めてくれるかもしれません。

よく考えてみれば筆者が育った東京でもヘビを見ることなど滅多になかったのですが、何となく気になる言い伝えや迷信というのは不思議なものです。

イギリスに伝わる迷信

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イギリスにもそのような言い伝えは数多くあります。

例えば有名なものでは、

  • 黒猫を見る
  • はしごの下を通る
  • 家の中で傘を広げる

といった行為は縁起が悪いとされています。

黒猫に関しては、魔女狩りの時代に「黒=不吉」と捉えられたという説から、逆に「黒猫が通り過ぎる=不幸が過ぎる」として幸運の象徴とされるという話もあります。全く逆の解釈に行き着いたというのは興味深いですが、これはあまりに極端な例で、ほとんど誰もが「迷信」と認識する類の話でしょう。

はしごの下の通過は、上から物が落ちてきたら危ないという最な理由もありますが、はしごが作り出す三角形が「神とキリストと精霊の三位一体を表すから」、またははしごは十字架からキリストを下ろす際に使われたから、など宗教的な由来を唱える人もいるようです。単に縁起が悪い、というだけでなく、何故か「その年は結婚できない」という説もあるようです。

イギリスの迷信はキリスト教の考えに基づいたものが多いようですが、現在のイギリスでは、公共の場所にはしごを立てかけたままにしてはいけないというルール(Health and Safety at Work=労働環境の衛生と安全に関する条例)がありますし、はしごを使う際には足元で支える人がいなくてはいけないので、自分の家でわざわざくぐり抜けるというアクションを起こさない限り、街中で知らずに人が使っているはしごの下を通っていた、などということは起こらないかと思います。

家の中で傘を広げる

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濡れた傘を家の中で広げて乾かすというのは、特に迷信深い人でなくても多くのイギリス人が何となく避ける行動ではないでしょうか。

先端が危ないと言えば縁起というよりただの教訓という響きですが、気にする人が多い割に、知り合いの中にもこれの由来を知っている人が見つかりません。イギリスと世界の迷信や言い伝えを集めたHarry Oliver著 ”Black Cats and April Fools”にも「違う環境で行う動作を別の場所に持ち込むことは望ましくないらしい」と書いてある程度で、それほど説得力のある理由が見当たりませんでした。

梅雨には雨が降り続き、そうでなくても湿気の多い日本から来た筆者は傘を乾かすことを重視するのですが、家の中で?という顔をされることもしばしばです。習慣を知っているので人の家では広げませんが、自分の家でやっていても来客の不安な表情を招くものです。

イギリスでは雨が過ぎれば空気はカラリと乾燥するので、傘を干すのを忘れても玄関に放っておくだけでいつのまにか乾いている、ということを学びましたが、何故だか分かってはいないけれど何となくやってはいけない気がする、というのは、日本人にとっての北枕や畳の縁を踏むことと同じなのかもしれません。

迷信?習慣?言い回し?

若者の中には、自分は迷信などに惑わされない、と豪語する人も多くいます。

そんな人に「イギリスの迷信を教えて」というと「クリスマスにヤドリギの下でキスをする(と結婚の約束になる)」「塩をこぼすと不運が起こる (何故か向かいに座っている人に)」といった例を挙げてくれますが、あくまで「科学的根拠はないし、昔の人が信じていたでっち上げ」という態度を貫きます。

その割に、誕生ケーキのロウソクを吹き消す時には「願いごとをして(内容は誰にも言ってはいけない)」と仕切ったり、希望的観測を話す時は”Touch wood.”と言って木を叩いたりします(hopefully=願わくば、という意味で。ちなみに周りに触れることができる木がない場合、代わりに自分の頭にタッチすることもあります)。

迷信の起源を把握して使ったり、教訓や生活の知恵、または英語としての言い回しとの違いを定めるのは難しいものですが、頭の中では疑問を持っていても、イギリスに生まれ育つことで染み込んだ考え・行動の習慣があるのだなと微笑ましく思うばかりです。

迷信=superstitionという言葉を使う時点で、特に尊重されることにはならないと思いますが、日本で伝わる迷信をいくつか知っておくと、良いコミュニケーションのネタになるかもしれません。

ちなみにアメリカ人は「touch wood」を「knock on the wood」と言うそうですよ。

新聞を読む

日本では、新聞は定期購読して毎日家に配達されてくるのが一般的ですが、イギリスでは、外に出かけて手に入れるものです。個人商店やスーパーマーケット、WHSmithといった文具や雑誌などを扱う小売店で購入できます。

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フリーペーパー

特に平日は無料新聞が配られており、電車の駅構内に置いてあるメトロ(Metro)を手に取ったり、ロンドンでは夕方に駅の外や人通りの多い場所で配布されるイブニング・スタンダード紙(London Evening Standard)を受け取って、その日のニュースからテレビ情報までを把握することが多いようです。

山積みされたものを見つけたり、配っている人に差し出されたらとりあえず手に取ってみるとよいでしょう。イブニング・スタンダードは夕方発行なので、テレビ欄は夜放送の分しかありませんが、映画情報やコメディ劇場、ライブ情報など当日または直近のおでかけプランにも役立ちますし、雨の日にバッグに入っていれば、濡れたベンチで座布団代わりに使ったりもできます。

電車の中で読み終わったら椅子の上に置き去る人、それを拾って読む人を見かけると思います。時には堂々と隣の人の新聞を覗き込む人もいますが、何しろ無料なので「盗み見している/されている」という感覚もないのでしょう。

プライドが高く、社会的な体裁を気にするイギリス人を想像していると、微笑ましい光景に見えるかもしれません。

タブロイド紙とは

上記の無料新聞はどちらもタブロイド紙と分類されるものです。タブロイド紙とはそもそも「タブロイド判」という新聞紙のサイズの分類の名称だったのですが、この手の型のメディアがこぞってゴシップ情報などを中心に扱っていたために「大衆紙」の代名詞のようになりました。

タブロイド紙は他に、UKでの売上一位のザ・サン(The Sun)、二位のデイリー・メール(Daily Mail)、さらにデイリー・ミラー(Daily Mirror)、デイリー・スター(Daily Star)、デイリー・エクスプレス(Daily Express)などがあります。デイリーの名の通り毎日発行ですが、それぞれ日曜版もあります。

新聞の政治的見解

イギリスの新聞はタブロイド紙であっても政治的意図が明確にされています。

例えば保守党(The Conservative Party)を支持するサン、メール紙は右翼(Right-wing)、労働党(Labour Party)を支持するミラー紙は中道左派(Centre-left)、エクスプレスはUKIP(イギリス独立党)を支持する右翼、EU懐疑主義(Eurosceptic)です。またモーニング・スター紙(Morning Star)は左翼(Left-wing)で社会主義(Socialism)推しです。

デイリー・スター紙は政治色をほとんど示していないようですが、だいたいの場合、手にする新聞で思考を推察できるので、話題選び、または話題にしない事項選びに役に立つかもしれません。

政治の話題を嫌がる人もいますが、親しい仲になると支持する政党を聞かれて隠す人は少ないような気がします。「あの人テレグラフ読んでるから…」などと、購読する新聞で人を判断する話を耳にしたりもします。外国人である日本人とは、政治に関する意見で仲違いすることは稀だと考えて良いとは思いますが…。

「普通の新聞」は?

タブロイド判と分けて、ブランケット判(broadsheet)として認識されているのは右・保守派のテレグラフ紙(The Telegraph)、中道右派のタイム紙(The Times)、中道左派のオブザーバー紙(The Observer)とガーディアン紙(The Guardian)、そしてファイナンシャル・タイムズ(Financial Times/FT)などです。

経済的自由主義(Economic Liberalism)を謳うFT紙は、2015年から日本経済新聞社の所有となりましたが、政治的には中道派(centrist)を掲げているようです。

これらもそれぞれ日曜版も発行しています。

オンラインで新聞を読む

現在ではどの新聞もオンラインで記事を公開しています。クロスワードバズルや数独(Sudoku)も載っていますし、スポーツ、経済、環境など求める情報にすぐアクセスできる(新聞として考えると便利に思えるのですが、ウェブサイトとしては普通の機能ですね…)ので、一度インターネットで好みの新聞を見つけたならば、日々飽きずに隅々まで楽しむことができるでしょう。

またツイッターのハッシュタグ「#tomorrowspaperstoday」で検索すれば翌日の各紙の一面を夜の間に見ることができるので、特に興味が湧いた新聞を朝一番で買いに行くこともできます。

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新聞の未来?

ロンドンの筆者の周りの若い人の間では、新聞と言えばほとんどの人がメトロやイブニング・スタンダード紙で済ませているようです。またはニュースはオンラインで目を通しているか、時々FTや「i」紙を買うという人もいます。

そんな中、友人のおばあちゃんは毎週日曜日にサンデー・ミラー紙を買いに出かけています(サンデー・ペーパー=日曜日の新聞を買いに行くと言います)。普段の情報はテレビとインターネットで仕入れており、一週間分のテレビ情報とクロスワードパズルが週に一度のお楽しみのようです。

テクノロジーの進化とインターネットの普及を経た時代の変化で、紙の媒体への需要が減っているのは日本もイギリスでも同じかもしれません。

1952年から続いていた権威ある音楽雑誌NME(New Musical Express)も、2015年からフリーペーパーとして無料配布され始め、主にオンラインでの情報提供へと形を変えました。

金曜の早朝の駅前で、音楽には全く興味のなさそうなおじさんが疲れた声で「New Musical Expressどうぞ」と差し出してくる薄い冊子を受け取る度に、時代は変わったなと思うのです。

メトロ紙の刊行は1999年から始まり、初版1827年発行のイブニング・スタンダードは2009年から無料配布となりました。

日本では、インターネットのなかった時代から新聞購読の習慣を続ける読者が多くいると想像できますが、その都度買いに行くイギリスでの新聞事情は、ここ20年で大きく変化したのではないでしょうか。

サンデー・ペーパーを楽しみにする友人のおばあちゃんは、もしも紙の新聞が廃止となれば寂しい顔をするかもしれませんが、クロスワードもインターネットでできるので、すぐに順応する気がします。

ロンドンの地下鉄ストライキに備えて

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ロンドンで地下鉄(tube=チューブ)を利用する生活をしていると、よくストライキが決行されることに驚くかもしれません。

数カ月おきに起こるような気がしてきます。驚きの次は閉口することでしょう。チューブで移動できる場所にはバスが通っているので、いくつもバスを乗り継いで目的地に到着することはできます。

ですが、 ストライキのせいで誰もがバスを利用するので、バス停は大混雑です。

そんな日は臨時で増便するものですが、いつもより多いバスの他、普段は乗らない人が自転車を引っ張り出してきておぼつかないハンドルさばきでゆっくり走ったり、交通ルールを特に把握しないで街中のレンタルバイクで走り出す人々のせいで、道路はもれなく大渋滞です。

ストライキの理由

イギリスは、TFL(Transport for London=ロンドン交通局)に限らず、労働組合が力を持っています。

というよりも、従業員が職場に意見することができる健全な状態を保とうとしているようです。

ですから賃金形態への抗議、人員削減への抵抗など、局の方針に不満を抱く従業員、それも現場での稼働という重要な役割をこなすスタッフが、何百万人もの利用客を混乱させるだけでなく、経済への影響もあることを承知のうえでストライキをチラつかせます。

丸24時間、時には48時間の間、地下鉄を走らせることができないとなると大変に困るTFLは、組合との話し合いに応じるわけです。

実際にストライキが起こる回数を考えると、どうやらそういった交渉はなかなか組合の思うようにはいかないようではありますが。

ストライキに対する反応

TFL職員の年収はなかなかのもので、地下鉄の運転手で5万から6万ポンドだと言われています。

英テレグラフ紙によると、トレーニングを初めたばかりの新人運転手でさえ2万4千ポンドほどで、3~4ヶ月のトレーニングを終えた段階でもう4万9673ポンドに上がるそうです。

イギリス人労働者のサラリーの平均が2万6500ポンドだという話を考えると、いきなりの高待遇と言えるでしょう。

これは地下鉄運転手の場合ですが、TFLのスタッフで言えば駅の職員の平均年収も3万ポンドと、英国人の平均よりも高い設定です。

管理職なら4万ポンド、とはいっても管理職よりも運転手のほうが高収入のようですね。

さらに年間休日日数は看護師、教師など平均して30日弱のところ43日、そして平均稼働時間は週36時間…聞けば聞くほど羨ましい環境です。

こういった情報は公開されているので、こんなに高待遇なのに何が不満でストライキばかりしているのだと、利用客の怒りを買うのはもっともです。

ですが、ストライキを起こすのは運転手に限らず様々な役職のスタッフを含めた組合の決断ですし、雇用者削減に対する抗議や労働環境の改善の要求は労働者の権利であるので仕方がない、と多くの人が思っているように感じます。

怒り半分、諦め半分、どうかストの日をやり過ごせますように、という気持ちではないでしょうか。

ストライキに備えて

ストライキ情報は、数週間前に発表されます。オイスターカードをサイトで登録してある人は、TFLからのメールが届くはずです。

ですから可能であればあらかじめ予定の時間や日付をずらしておくなり、決行された場合に備えて目的地に辿り着くルートを探っておくなり、ある程度の対策を練ることができます。

ストライキ当日

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定期券(公共交通機関のページ参照)を持っている人は、いつもと違うルート/手段で目的地に辿り着いても過剰課金されることはありません。

バスを乗り継いだり、歩きに挑戦する人は、いつもより(場合によっては数時間)早めに出発する必要があるでしょう。

特に観光客の多い中心部を徒歩で行く場合は、ただでさえ途絶えないゆっくり歩きの人の波でイライラが募ることと思いますので、大通りを避けた裏道を進むほうがいいかもしれません。

また臨時のバスが多数運行されるはずですが、バス停がいつもと違う場所になったりするのでTFLのサイトでよく確認してください。

徒歩のススメ

ロンドンの特にゾーン1は、地下鉄の駅の間隔も近く、チューブマップで見るとかなりの距離も案外徒歩で行けるものです。

確かにストライキ中に経験すると焦りと混乱でマイナスなイメージになるかもしれませんが、歴史ある建物を見上げたり、その中にひっそり存在する緑の公園を見かけたり、移動手段としての徒歩はとても実りの多い時間になると思います。

バスや地下鉄を乗りこなす、自転車で風を切る、といった住人らしい体験とはまた別に、街並みをより深く知り楽しむことができるこの贅沢な時間の使い方は、ロンドンに暮らしているからこそ可能なのかもしれません。

度々襲ってくるストライキを、精神的なダメージをあまり受けずに乗り越える手段が見つかりますように。

マーケット

アンティーク・マーケット、ストリートフード・マーケットから街角の食料品マーケットまで、ロンドンでは常に様々なマーケットが開かれています。

歴史ある習慣が続くのと同時に移り変わりの激しいロンドンでもありますので、全てを挙げるのは不可能ですが、有名どころ、注目どころをいくつかご紹介します。

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アンティーク・マーケット

ウェストロンドンのノッティングヒルにあるポートベロー・マーケット(Portbello Road Market)は、アンティークを扱うお店が多いことで有名です。

特に週末はアンティーク狙いの人や観光客で大変な混雑ですが、ウィークデイにも果物や野菜、古着を扱うお店やストール(屋台)がオープンしているので、近所の人は日常の買い物に利用したりもします。木曜日だけはお昼頃には全てのお店が閉まってしまうので気をつけましょう。

ここは毎年8月の終わりに開催されるノッティングヒル・カーニバルでも有名ですが、映画「ノッティングヒルの恋人」の彼の地でありますので、スクリーンで見たあのマーケットを歩くだけでも、訪れる理由になるかもしれません。

アレキサンドラ・パレスでは年に4回、日曜日に特大のマーケット(Alexandra Palace Antiques and Collectors Fair)が開かれます。入場料がかかりますが、スケジュールさえあえば、気合を入れて訪れる価値ありでしょう。

アンティークと呼べるものの割合は低いかもしれませんが、カムデン・マーケット(Camden Market)でも古い掘り出し物を見つけることができるかもしれません。

また観光地として有名なカムデンとは別に、ノースロンドンのイズリントンというエリアにカムデン・パッセージ・アンティーク・マーケット(Camden Passage Antique Market)があります。

お洒落なエリアですので、扱う品物も洗練されているという印象です。隣接のピアポント・アーケード・マーケット(Pierrepont Arcade Market)含め、エリア一帯が可愛らしい雰囲気ですので、お店やストールを巡る途中でお茶をするにも楽しめるでしょう。

リバプールストリート駅からすぐのオールド・スピタルフィールズ・マーケット(Old Spitalfields Market)、コベントガーデンのマーケット(Covent Garden Market)、メリルボーンのアルフィーズ・アンティーク・マーケット(Alfies Antique Market)など、屋根のある常設マーケットは気軽に立ち寄ることができます。

毎週金曜日、朝6時から午後2時まで開かれるバーモンジー・マーケット(Bermondsey Market)は、ロンドンブリッジから向かいます。

それほど大きな規模ではありませんが、常設されているマーケットに比べると、ストールごとに気合が入っている、または商品が厳選されているという印象を受けるかもしれません。

また、どう間違っても溢れるほどの客がやってくるポートベロー・マーケットに比べて、値段設定が多少低かったり、オマケしてくれる人情が少々厚かったりするというのは気のせいでしょうか。近所にはバラ・マーケット(Borough Market、後述)もあるので、金曜日のイベントに計画してもいいかもしれません。

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フード・マーケット

美味しいものを食べたい人は、バラ・マーケットへ。肉、魚、パン、チョコレート、ワイン、敷地にひしめくストールでランチを頬張るのも良し、お土産に食糧を買い込むも良し。1014年にスタートして数年前に1,000年目を迎えたマーケット、月曜と火曜以外は、全てのお店が空いている本気営業モードです。

土曜日はイーストロンドンのブロードウェイ・マーケット(Broadway Market)を訪れてはいかがでしょう。

リバプールストリート駅から走るオーバーグラウンドのロンドンフィールズ駅から、こじんまりした公園London Fieldsを突っ切れば、お洒落さんで賑わったマーケットが目に入ります。それほど大きくないのですが、移民の多いハックニーという土地柄か、アフリカ系、ベトナム系など多様なストールが並びます。

ブリック・レーン・マーケット(Brick Lane Market)は、古着・アンティークの買い出しのついでに、昨今生まれ変わりを果たし、注目を集めているブリクストン(Brixton)は常設アーケード市場の他、蚤の市、ファーマーズマーケットなど様々なストールを楽しめるでしょう。

またお魚が恋しい人は、ビリングスゲイト・マーケット(Billingsgate Fish Market)に早朝(4時から8時半営業)に出かけると良いでしょう。海に囲まれた島国とは言っても、日本ほどのよいシーフードとの出会いがないイギリス。新鮮な魚を買うには、やはり魚市場でしょう。

お花のマーケット

最後に、お花のマーケットを紹介します。

イーストロンドンのコロンビア・ロード(Columbia Road)で毎週日曜に開催されるフラワー・マーケットでは、朝8時から午後3時頃まで所狭しと色とりどりの花が並びます。

オーバーグラウンドのホクストン、ショーディッチ・ハイストリート、ケンブリッジ・ヒース、地下鉄ベスナル・グリーンと数カ所の駅に囲まれており、マーケットの時間を外すと本当に普通の住宅街のようですが、週末に若者が遊びほうけるイーストロンドンのくたびれた日曜の朝を活気付ける、華やかなマーケットです。

それでも普段から可愛らしいカフェやアンティークのお店が並んでいますので、ハックニーに縁のある人は訪ねてみてください。

ここに挙げたもののほとんどは、観光客にも知られたイベントのようなものですが、家の近所に、もっと素敵なマーケットがあるよ、という方も多いと思います。筆者は、果物や野菜はできるだけマーケットで手に入れるようにしています。

ザルに山盛りを1ポンドで買うことができることの他、小さなビジネスでの消費は悪い気分がしないからです。

顔見知りができて、オマケを貰えるようになることもあるかもしれません。みなさんも、気軽な気持ちでマーケットを利用してみてください。

お茶を飲む

イギリスでお茶を飲むと言って思い浮かぶのは、アフタヌーンティーでしょうか。

そもそも貴族の嗜みだったこのお茶タイム、ちょっとしたマナーがあるようです。

基本的には小さなサンドイッチ、スコーン、ティーケーキの3種類がこれまた小さなお皿に乗せられ、三段重ねのトレイで運ばれてきます。

下の段から食べ始め、ポット入りの紅茶はまずはストレートで、二杯目からはミルク入りで、がお上品らしいですよ。

入店にドレスコードがあったり、有名店では予約が必要だったりするので、事前にリサーチして準備万端で望みたいところです。

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ピカデリーサーカスにある老舗フォートナム・アンド・メイソン(Fortnum & Mason)のティールームでは、予約制で44ポンドからアフタヌーンティーが楽しめます(予約はこちら)。

つまり、お財布の準備も必要です。メイフェアのスタイリッシュなラウンジ、ザ・スケッチ(The Sketch)では、ギャラリーでのアート鑑賞やレストランとしての利用もでき、ロンドンでのお洒落な一日を楽しめます。ですがバレンタインデーや母の日などイベントのシーズンのアフタヌーンティーは一人につき75ポンドと特別価格が設定されていますので、予約の際は注意してください。

面白いのはBベイカリー(B Bakery)によるアフタヌーンティー・バスツアーでしょうか。古いルートマスターに乗って、お茶をしながらロンドン・アイ、ビッグ・ベン、国会議事堂やウェストミンスター寺院、バッキンガム宮殿からハイドパークをぐるっと回って観光ツアーが楽しめます。

また夏にはボートに乗ってテムズ川を行くアフタヌーンティー・ツアーも提供されるので、一味違った体験をしたい方にはおすすめです。

ちょっぴり華麗な「イギリス体験」となるアフタヌーンティーですが、紅茶は市民の生活にも深く根付いており、家庭用のティーバッグが手頃な価格で販売されています。

有名なのはPG Tips、Typhoo、Yorkshire Tea辺りでしょうか。紅茶専門店の高級なものではなく、これらの庶民的プライスの気に入ったブランドを飲み続けるという人が多く、お土産やプレゼントで貰った趣向の違うお茶が生活に入り込むスキがない、という気がします。

日本語の紅茶は「紅」という字を含んでいますが、イギリスの紅茶はBlack Teaと呼ばれます。イギリスで赤い茶、red teaは主にルイボスティーを指すようで、緑茶=グリーンティーはミント入りなど様々な変わり茶となっていることもあります。

イーストロンドンの筆者の周りでは、庶民の紅茶はだいたいミルク入りという印象です。

美味しくなくて飲めないから牛乳を入れて味をごまかすんだよ、と教えられたのが冗談なのかどうかは未だにわかりませんが、ティーバッグをスプーンでぎゅうぎゅう絞る姿に戸惑う必要はありません。

マグカップに濃く淹れた紅茶にミルクと砂糖を入れる、労働者が休憩時間に飲むタイプのお茶が「ビルダーズ・ティー(builder’s tea)」と呼ばれて市民権を得ているイギリスです。

ティーポットに茶葉を泳がせて、繊細なティーカップに注ぐなどいった優雅なお茶の入れ方をするのは映画の中の話なのだな、と信じるようになりました。

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一杯のお茶を”a cup of tea”と呼ぶことはご存知かもしれません。それが短くなって”cuppa(カパ)”とも言われるので、お茶でもどう?という時、”Would you like a cuppa?””Do you fancy a cuppa?”もしくはシンプルに”Cuppa?”と聞かれることもあるでしょう。

また、”put the kettle on”と言えば「やかんでお湯を沸かす」という意味ですが、お湯を沸かす目的と言えば…そう、お茶を入れることです。ですから誰かに”Can you put the kettle on?”と言われて電気ケトルのスイッチを入れただけでいたら、紅茶が運ばれてくるのを待ち続ける人がいるかもしれません。

またteaと言って、夕食を意味することもあります。主に北部ではまだその言い方が残っているようですが、北部訛りの人に「今日午後にうちにおいでよ、一緒にteaでもどう?」と言われたら、そのteaが何を意味するのか確認してみてはいかがでしょう。

Teaが食事かもしれないという文化に理解を示す外国人を、もしかしたら気に入ってくれるかもしれません。

今世紀に入ってからはハーブティーやコーヒーの人気に押されて、消費量が減ってきたと言うイギリスの紅茶文化ですが、日本で「お茶をする」という言い回しに「コーヒーを飲む」可能性が含まれているのと同様、cuppaがコーヒーを意味する場合もあります。

日本でのコーヒー文化を考えると、ロンドンを歩き回る際、または日本からのゲストを観光に連れて回る際、コーヒー休憩が嬉しいことがあるかもしれません。

ロンドンのカフェ事情は、日本とあまり変わりません。スターバックスを初めチェーン店が至る所にあり、「ロンドンに来たからにはアフタヌーンティー」というガイドブックの高いハードル設定に疲れた時には、気軽に一服することができます。

また多くの店舗にお店の中だけでなく外にも椅子とテーブルがあって、特に夏場はのびのびと休憩することができますし、持ち帰りにして公園に座ってゆったり飲むというのも、ロンドンを満喫する良い方法でしょう。

筆者はスターバックス派ではないので詳しいメニューはわかりませんが、メニューも日本とそれほど変わりがないのではないでしょうか。

他にえんじ色がトレードマークのCOSTA(コスタ)、ブルーのCafe Nero(カフェ・ネロ)などが人気で、共にスタンプカードでポイントを貯めて無料の一杯を目指すことになります。

特にカフェネロはスタンプ10個で一杯無料なのですが、陽気な店員さん(なるべくイタリア人を採用しているようです)にスタンプをサービスしてもらえることも多いので、割りと早く無料の一杯に辿り着く気がします。

生クリームたっぷりでアイスを砕いた「冷たいミルク入りコーヒー」を提供するネロと比べ、コスタでは日本でいう「アイスカフェラテ」に近いものが飲めるので、筆者の夏の気に入りです。

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面白いのは、ロンドンのカフェで持ち帰り(take away)を注文すると、お店で陶器のカップで飲むより安くすむことです。

紙コップ代で高くなるのかと思いきや、食器を洗う労働力(たいがい食器洗浄機ですが)に課金される模様です。

チェーンのコーヒー店では、ケーキやマフィン、サンドイッチなどの他、店舗によってはパスタや温めてもらうパニーニなどを販売しているところもあります。

またどこをとっても絵になるような個人経営のお洒落なカフェも多くあります。

高い値段設定で小さなカップにちょっとだけのコーヒーを手渡されるその環境に、ちょっと悔しい気がしながらも通ってしまうのは、やはりチェーン店とは違った味を提供しているからかもしれません。

素敵なお店でも自宅でも、日本にいた頃と同じくらいくつろげる環境がロンドンで整いますように。

日本食が恋しい時

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限られた生活費で食い繋いでいかなくてはならない留学生活。ラーメン屋さんや庶民的な価格設定の日本食レストランも増えましたし、昨今の日本食ブームの定着で日系のお店に行かなくとも普通のスーパーマーケットやテイクアウェイでお寿司などを手に入れることができるようになりましたが、それでもラーメンに10ポンドも出すのは財布が許さない、「人参入りの手巻き寿司風の何か」をお寿司と呼ぶわけにはいかない、という人もいることでしょう。

そのような場合は、自分で日本食風の何かを安く作るという方法があります。そもそも日本と違って硬水であるため出汁をとるのからして難しいという話もありますが、そうは言っても、嬉しいことに自炊での日本食作りも大変楽になってきました。

日本の食材を買うことができる店は、ロンドンであれば幾つか選択肢があります。

まずは中心部にあるJapan CentreRice Wine Shop、西部・北部などに店舗を構えるAtari-Yaといった日系のお店に行く、またはオンラインショッピングを利用するというのが簡単でしょう。

ですが少々値が張りますので、筆者の場合は日本から買ってくることができなかったものや緊急で必要なものなどを買いに行って、予定していなかったものまで購入してあとで頭を抱える、という使い方をしています。

このようなお店ではほとんど何でも手に入ると言っても差し支えないでしょう。調味料から冷凍食品、お米や長芋などのお野菜、手作りお惣菜などの他、イギリスのお肉屋さんでは売っていない薄切り肉やお刺身を扱っているお店もあります。ですから、ロンドンの日本食生活はほぼ安泰です。

またTescoやSainsbury’s、Morrisonsなど「いつものスーパーマーケット」にも、今や必ずと言っていいほどアジアン・コーナーがあり、キッコーマンのお醤油や、イギリスで日本食の輸入業を営むTazaki FoodsのブランドYutakaの商品などを気軽に買うことができます。出前一丁のようなインスタントラーメンや日本のビールも、特にアジアと構えてもいない普通のコーナーで売られていたりします。

筆者は、ごま油はわざわざ日系のお店の日本のブランドを買わずに各スーパーのブランドのToasted Sesame Oilで済ませますし(ゴマ:sesameも買えます)、お米もSushi Riceとしてスーパーのアジアン・コーナーで売られているものよりも、イギリス人がライス・プディングという甘いおかゆ的デザートを作るのに使用するPudding Riceで代用しています。Basmati米など美味しくて安い長粒米もありますが、日本のお米が恋しい時はねばりがでる短粒米が役に立ちます。

そして500グラム1ポンド程のプディングライスのお得感。特にフラットシェアなどで5キロのお米を保管するスペースがない生活の場合や、気前よく買った日本米完食時の緊急ライスとしてもおすすめです。筆者は話に聞いていたこの商品がアジア食品コーナーにも穀物コーナーにも見つからず、やはり日本の皆さんが通うWaitroseやMarks & Spencerのような少し高級なスーパーに行かなくてはいけないのか…と庶民の味方の安スーパーの片隅で途方に暮れたことがありましたが、デザートコーナーを探してみると良いでしょう。だいたいスーパーのオリジナルブランドが少なくとも一商品は扱われているでしょう。

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普通のスーパーでは、他にもネギの代わりに使えるspring onion(またはsalad onionとも呼ばれる)や、キャベツも手に入ります。日本のような丸いキャベツはどの葉をとってももれなく固く、火を通す以外に方法が見つかりませんが、写真のように先が尖ったsweetheart cabbage(またはpointed cabbageという名)は、千切りにして生で食べたり、日本のキャベツと同じ使い方をすることができます。

また、どうしても今日だけは薄切り豚肉でなくてはイヤ、というときにはunsmoked bacon(スモークされていないベーコン)がまあまあ良い仕事をします。ベーコン感は拭えませんが、普通のベーコン(smoked bacon)ほど塩辛くないので、多少煮込んだり味付けをしても食べられるレベルだと判定しました。

そして生っぽい海の味が欲しい、という時には。スモークサーモンがなかなか役に立ちますが、筆者はよくtrimmed smoked salmon(切れ端)を買います。

スモークサーモンと同じコーナーに小さめのパックで並べられており、かなりお安く売っています。刻む必要がないので、空腹で日本食レストランの脇を通って帰宅した時などの緊急時、パックを開けてそのままネギやごま油と和えて冷凍しておいたご飯に乗せて食べたりします。

鯖(mackerel)やマス(trout)などをスモークしたものも、真空パックで2ポンド程で買うことができますので、フライパンで炒めていつも見る野菜のお浸しのような日本風の付け合せを添えれば、食卓はほぼ和になるでしょう。

もやし(bean sprouts)や生姜、白菜(Chinese cabbage)も普通に売っていますし、少々大味で水っぽい巨大キュウリ、皮が固いので少し長めの調理が必要な特大なすびにほうれん草(サラダ用に葉っぱの部分のみパックにされていることが多い)なども「いつものスーパー」で手に入るものは本当に多いので、醤油や出汁のもとなど基本の調味料があれば、日本の味は夢見るほど遠くはないでしょう。

最後に、チャイニーズ・スーパーマーケットに行くという方法もお伝えしておきます。大根や日本風の梨(最近ではよく普通のスーパーでも見かけますが)などの他、うどんや素麺なども数種類の取り扱いがあったり、イギリス系のスーパーでは滅多に見ない丸ごとのイカやカニなども売っているかもしれません。調味料やスナック菓子も、日本を思い出させる味が少し安めに手に入るので、近所にあれば是非活用してみてください。

次の帰国時まで、あなたの胃袋がホームシックになりませんように。

イギリスの食事は本当にまずいの?

イギリスの食事は不味い、と言う人は、ここしばらくイギリスを訪れたことがない人なのでははいでしょうか。

確かに今ほど安心して知らない店に飛び込めない時代もありましたが、2000年辺りから食のクオリティが上がってきた、というのが、筆者の周囲のイギリス人及び外国人の意見です。

つまりそれ以前に日本から訪英して、以来20年近く一度もイギリスの地を踏んでいない人は、残念な食事をした思い出で終わっている可能性があると考えられます。

例えば1ポンド300円時代であったなら、現代なら700円前後の感覚である5ポンドの格安外食メニューに、1500円も払った記憶になるのです。5ポンドの食事に質を期待しないのならば、20ポンドくらい奮発してまあまあな一皿を食べようにも、日本円で考えると6000円。相当上品な体験を期待したところで、ありつけるのはまあまあな食事、という具合であったことでしょう。

インド人やイタリア人が営むレストランなら安心、という説もありましたが「イギリスに来たならピザ食べなきゃ!」「イギリスのストリートフード、カレー」などと謳うガイドブックがあったとも思えませんので、街中の観光客向けレストランや、髪の毛の絡まったやつれたお母さんが営む薄暗いパブに飛びこんで、頬を濡らしながら食べもの風の何かを喉に流し込んだのかもしれません。

90年台の終わりにシェフJamie Oliverが出現し、食の改革に取り組み始めたり、Gordon Ramseyなどがセレブレティ・シェフというキャラクター付けで脚光を浴びたことで、イギリス人の食への興味と、一般家庭での料理への情熱が高まってきたと言えるでしょう。

それから10年20年経て、今でこそ家でも外でも健康で美味しい食事を求める風潮が定着しましたが、変革の途中では、ホームステイやホームパーティに招かれた家で、くたくたに茹ですぎていない野菜やのびきっていないパスタを振る舞われる可能性は、それ程高くなかったと思われます。ですから「イギリスの食事は不味い」と断言する人には、残念な体験をしたその人の不運を考慮して、優しい気持ちで接してあげてください。

現在のイギリスでは、オーガニックレストランや、ガストロパブと言われる美味しい料理を出すことを売りにしたパブが至る所に開店し、庶民が近場で満足な食事をすることも難しくはありません。ですが、当時の日本人なら残念な体験として封印したかもしれない、けれども懐かしいような不思議な感情を掻き立てる味に触れることも、まだまだ可能です。

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例えばウナギパイやウナギのゼリー寄せ(jellied eel)。蒲焼の国からやってきた人には、半透明な塩味ゼリーに閉じ込められたウナギには悲しい水っぽさを感じるかもしれませんが、写真のイースト・ロンドンはLeytonstoneにあるEel & Pie Houseでは、特に外はサクサク中はふっくらでもないパイ(肉もあります)とマッシュポテトやマッシュされたグリンピースを3ポンド以下で食べられます。

その昔の庶民の味を想像するのにもってこいです。筆者はこれが大好きで、2016年11月にロンドンのパイ&マッシュのお店を特集したTimeOutに敬礼をしたいところです。

イギリスといえばフィッシュ&チップスもよく知られていますが、2009年にはリーズ大学の科学者がチップス(フライドポテト)のニオイの成分は「バタースコッチ、ココア、玉ねぎ、花、チーズ、アイロン台」であると分析、発表しています(yorkshire post)。今ドキの洒落た人の中にはフィッシュ&チップスを臭いという人もいるようですが、この使い道の見えない研究結果は、イギリス庶民の胃袋の理解に役立つでしょうか。

また筆者は、パイ皮の代わりにマッシュポテトでミンチ肉を覆ったシェパーズ・パイの付け合せに茹でたジャガイモ、茹で人参にマッシュキャロット、といった強引な一皿に出会ったこともあります。昨今流行りのおしゃれなレストランでは見られない、洗練されていない素朴な料理は、イギリスでの生活を愛しく思うのに欠かせないアイテムかもしれません。

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料理の美味しさは個人の観点でしかないので、一概に批評することはできません。安かろうが高かろうが、自分なりの「値段と釣り合う胃袋の満たされ方」を見つけることが重要ではないでしょうか。